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賑やかな空手道場、拳と向かい合いながら笑い合う。
私と同じ黒帯を締めている拳と向かい合う。



仕事をしていても日曜日は定期的に拳が空手道場に来られていたそう。
時間は決まっていなかったけど、日曜日だけはなるべく来ていたそうで・・・。



だから、日曜日だけは拳から空手を教わる人達が多く来ているそう。



そのみんなが集中した様子で拳と私を囲い2人の組手を見ている。



今日何度目か分からない組手をまた始める。



お互いに同じタイミングで礼をして、歩み寄る。



そして、構えた・・・。



「2つ聞いてもいい?」



私だけが呼吸を乱しながら聞くと、拳が頷いた。



「お土産、何で黒い手鏡だったの?」



その質問には拳が照れた様子で笑った。
付き合ってから、拳はよく動くようになった。



「俺にとって、妙はめちゃくちゃ可愛くて。
めちゃくちゃ可愛い女の子で。
俺にとっては黒帯の可愛さの女の子だったから。」



そんなことを言いながら精神を乱していそうなので、今なら勝てそうな気がしてしまう。



「あと1つ。
私に・・・何が見えるの?」



それを聞いたら拳がめちゃくちゃ精神を乱したのが分かった。
それには大笑いしてしまうと、拳が「恥ずかしいから教えない」と今日も教えてくれなかった。



「俺からも2ついい?」



「うん。」



私が答えると、拳が精神を乱しながらも口を開いた。



「この組手が終わったら、俺の方のアクエリアス飲んで貰える?」



「いいよ!!」 



拳の方のアクエリアスはめちゃくちゃ飲まないといけなくて。
キャップが出来ないくらい溢れているらしいから。



私の方は・・・



ちゃんと揺れることなくある・・・。



その色だけを濃く染めていき、ちゃんとある・・・。



「あと1つは?」



私が構えながらそう聞くと、拳が集中した顔で私を見詰めてきた。



「今日はこれで最後で。
終わったら早く俺の家に帰ろう。」



そんなことをめちゃくちゃ集中した顔で言ってくるので面白すぎて。



笑いながらも精神を鎮め、握り締めた拳に力を入れた。



「いいよ。この後、サメが来るはずだから。」



「鮫島君が・・・?
何で?」



「サメ、松居先生の孫だから。」



そう言った私に拳がめっっっちゃくちゃ驚いた顔をしたので、その隙に先手を打ちにいった。



守る為に・・・。



今度は、拳と私のこの時間を守る為に・・・。



2人で拳をぶつけ合うこの時間を・・・。



2人で愛を込めた拳をぶつけ合うこの時間を守る為に、戦う・・・。



そう思いながら、拳(けん)に拳(こぶし)を突いた・・・。



拳(こぶし)を突いた・・・。



愛を込めて・・・。



拳(こぶし)に愛を込めて・・・。



拳(けん)に愛を込めて・・・。







end.....
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