【完】拳に愛を込めて(カットページ掲載済2023.4.30、詳細は内容欄に記載)

11

11-6

「数時間前より弱くなってるな！！！
前歯欠けて流石に凹んでるのかよ！？」



今日もサメが住んでいる綺麗なマンションを訪ね、裏にある小さな公園で殴り合いの喧嘩をした。
そしたらあっという間に負けた。



拳からの手紙が届いてから数日間は、私は弱くなる。
精神が乱れているからだと思う。
拳からの手紙が届くと精神が乱れる。



拳に会いたくて・・・。
拳と話したくて・・・。
拳と拳(こぶし)をぶつけ合いたくて・・・。
拳(こぶし)に想いを込めたくて・・・。



行き場のないその想いが、私の心だけでなく精神まで乱していく。



「そうだ、前歯欠けてたんだった・・・。」



私が呟くとサメが大笑いした。
大笑いして・・・私をジッと見てきた。



「母親に連絡してある、お前の前歯欠けさせたって。
明日妙子の家に謝罪と金渡しに行くってよ。」



「なにそれ？そんなのいらない。
お母さんからは呆れられただけだし、お父さんにはお兄ちゃんから上手く言ってくれるって。」



「そういうわけにいかないだろ、妙子は女の子だし。」



サメは・・・悪い奴じゃない。
他の男子みたいに私に“女が少ない”と絶対に言わないし、こんな私が女であることをバカにしたような発言もしない。



むしろ、たまに結構心配した発言をしてくるくらいで。



なのに・・・
何故か岩渕君にだけは当たりが強い。
しかも岩渕君にだけはめちゃくちゃイライラしていて、他の男子とも違う感じだけど度が過ぎると虐めみたいな感じのことも言う。



そんなことを思っていた時・・・



「こら・・・っ！！！あんた！！！！」



と、女の人の大きな声が響いた。