【完】拳に愛を込めて(カットページ掲載済2023.4.30、詳細は内容欄に記載)

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身震いしてくるくらい澄んでいる空気の中、道場の真ん中で拳と向かい合う。



“凄い”



そんな感想しか出てこない。



そんな感想しか出てこないくらい、昨日までとは違うのがよく分かる。



拳が集中した目で私のことを見詰めてくる。



そんな目で見詰められると・・・



「ヤバい、めちゃくちゃ興奮してきた。」



「妙、そんな感じだよね。
精神を鎮めないと良い結果が出せないよ。」



「だって拳がめちゃくちゃ強いのが分かるから。
こんなに強い対戦相手と戦えるのかと思うとめちゃくちゃ興奮してくる。」



私がそう言うと拳が嬉しそうに笑った。



「あと少ししか妙と喧嘩出来ないから。
だから本気出すよ、いい？」



「いつも本気出してって言ってたじゃん。」



「うん・・・。
止めてくれる松居先生もいないからね。
ちゃんと受けてかわしてよ。」



「受けてかわせなくてもそのまま続けて。
私達の場合は防具も何もしない。
寸止めもしない。本気の喧嘩だから。」



私の言葉を聞いた拳が私の胸の辺りを見てきた。



そして、言った。



「その拳に妙の気持ちも込めて。
受け止めるから。
俺なら受け止められるから。」



「うん・・・。私は強くなりたい。
性別は女だしこんなに小さいけど。
それに精神も小さいけど。
私は喧嘩が強くなりたい。」



「何の為に・・・？」



拳が聞きながら、今度は私の顔を見てきた。



「守る為に。
私が守りたいと思ったモノを守る為に。」



そう言って拳を見ると満足そうな顔で私を見て笑っている。



それから2人で見詰め合った後、何の合図もないのに2人で全く同じタイミングで礼をした。




そして、前に進み・・・




構えた・・・。




拳と喧嘩をする為に、構えた。




強くなる為に。




私は強くなる為に、構えた。