【完】拳に愛を込めて(カットページ掲載済2023.4.30、詳細は内容欄に記載)

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お高いスキンケア用品で全身をケアし、お高いヘアオイルとドライヤーで髪の毛をセットした。
そして、部屋にあるドレッサーで化粧をしていく。
私に似合う“女の子らしさ”になれるように、化粧をしていく。



ドレッサーの鏡の中で、可愛い可愛い女の子になっていく“私”。



“私”は、可愛い可愛い女の子になった。



あの人が笑ったから。



猿みたいな“私”を、あの人が笑ったから。



あの人と付き合いたいとか、想いを伝えたいとか、そんなことを思ったこともなかった。



でも、笑われたのはショックで。
凄く、ショックで。



追究してしまった・・・。



“女の子らしさ”を、追究してしまった・・・。



性格までは変えられなかったから、他の所での“女の子らしさ”を追究してしまった・・・。



二度と会いたくないと思っていたし、二度と会えなくなったとも思っていた。



でも・・・



でも・・・



もしも・・・



もしも・・・



いつか何処かで、何処かで・・・



偶然にも会ってしまった時・・・



その時はビックリさせてやろうと思っていた。



ビックリさせて・・・



バカにしたような笑いではなくて・・・



少しでも、“私”に“女の子”として笑いかけて貰いたかった・・・。



それだけだったのに・・・。



それだけで満足だったのに・・・。



「“私”のこと、忘れちゃったの・・・？」



ドレッサーの鏡の中に映る可愛い可愛い女の子に呟いた。



気付かないはずはないと思っていた・・・。



あの人は、敏感すぎるくらいに目が良い人だから・・・。



でも、“私”に気付くことはなかった・・・。



だから忘れてしまったのだと思う・・・。



最後に会ったのは随分と前のこと。
それも最悪な最後になってしまって。
忘れることにしたのかもしれない。
“私”のことをあの人は忘れることにしたのかもしれない。



仲直りのキッカケになればと思ってしまっていたのに・・・。



私の見た目がこんなにも変わっていたら、あの人だって無視出来ないくらいにビックリすると思ったから・・・。



だから、追究したのに・・・。



少しでも“女の子”として笑って貰って、仲直りをしたかったのに・・・。



“私”はずっと、仲直りをしたかった・・・。



ちゃんとした名前も知らなかったし、住所も連絡先も知らなくて・・・。



だけど、いつか何処かで・・・



偶然でも会えた時・・・



仲直りをして欲しかった・・・。



“私”と、仲直りをして欲しかった・・・。



可愛い可愛い見た目の的場妙子に恋をするのではなくて・・・



“私”と仲直りをして欲しかっただけだったのに・・・。