今宵、鼠の姫は皇子に鳴かされる

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「強く強く、鳴きすぎちゃった・・・。」



クレアンのことを強く強く思い浮かべながらクレアンの名前を呼んでしまったらしい。
そうするとクレアンと頭の中で会話をすることが出来る。



クレアンは“奇跡”を起こすことが出来る。



クレアンはこの国に“奇跡”を起こす為、この世界に現れてくれた“鼠の皇子”。



私達の皇子・・・。



私達の・・・



私の・・・



私の、皇子・・・。



夜の闇の中、みんなを生かす為に1人で駆け回っていた“鼠”の私の、皇子・・・。



私はクレアンのことが他のみんなとは違う“好き”で。
クレアンとの子どもが欲しいと思うくらいの“好き”で。
これはきっと“愛している”という感情なのだと分かる。



分かるけれど・・・



「この王宮を“鼠”が乗っ取った時、私の役目は終わる。
だから子作りなんかしない方がいい。
私は“鼠”・・・“元鼠”ではなく、私は今も・・・これからも、“鼠”・・・。」



クレアンのことを思い浮かべないようにそう呟いた。
胸の真ん中に刻まれている“✕”の焼き印、クレアンが刻んでくれた欲望の“◯”ではなく“✕”を指先でなぞりながら。



私は“鼠”・・・。



“鼠”の親から生まれ、名前もない“鼠”・・・。



「みんなが強く生きられるよう、豊かに生きられるよう、先に動くだけでいい。
私の為の欲深さではなく、民の為の欲深さだけでいい。」



そう呟き、綺麗な自分の手を眺めた。



夜の闇の中で浮かび上がる私の白くて綺麗な手。



3年も経った、経ってしまった・・・。



「あと少し・・・。
あと少しで、アント殿下の姫でいる時間は終わる・・・。」