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「“死者の国”で嘆いているのが聞こえた?
クレアンは紺色の髪色だけど“奇跡”を起こせるから、初代国王の嘆きが聞こえた?」
「そうだな、聞こえた。
“欲深いことが美徳”とされる王族達、それを正して欲しいと。
“己の為の欲深さ”ではなく“民の為の欲深さ”、それが美徳であると。」
「私達も“民”なんだよね?
クレアンはそう考えてくれているんだよね?
名前もないけど・・・あ、でもみんなあるのかな。
覚えていないだけで、みんな名前をちゃんと持っているのかな。」
丘の上から“鼠の地”の沢山の炎の光りを見下ろす。
「さっき会った男の息子、オルセオは私の1番大切な仲間。
アンナである私に剣棒を渡してくれて使い方も教えてくれた。
私が盗んできた食べ物をみんなから返してくるように怒られていた中、1番最初に食べてくれたのはオルセオ。
凄く凄く美味しそうな顔で食べてくれて、そのオルセオの姿を見て他のみんなも口にした。」
何も言わないクレアンが私の隣に並んだ。
揺れる炎の光りの円を身に纏うクレアンが。
「今からそのアントに生みの親の話をしてくる。
そして、王宮の人間に芋を2つにして欲しいと一緒に言って欲しいと頼んでみる。
みんなから反対される中、私の分の剣棒を王宮の人間に求めてくれたのはそのアントなの。
鞭で打たれるかもしれないのに剣棒を求めてきてくれた。」
腰に差している剣棒を手に取り、この胸に抱き締める。
「王宮の人間は“鼠番”に戻っているのかもしれない。
あの王宮は不自然なくらいに死角が多くてそこに見張りもいない。
“鼠”の罠だと思っていたくらいに。
まずは芋を貰えたら次は武器を求めてみる。
ここのみんなの意識を変える為に、まずは武器をその手に持たせたい。
みんなの胸はあまりにも弱いから。
まずは強い武器を手に持たせてその胸に強さを抱かせたい。」
そう言ってから、何も言わないクレアンのことを見た。
クレアンはやけに深刻そうな顔で“鼠の地”を見下ろしている。
そんなクレアンの横顔を見詰めながら言った。
「ありがとう、皇子。」
私の言葉にクレアンはゆっくりと私の方を見て、そしてその目を少しだけ揺らした。
「身分の皇子ではなくて、誉め称える方の“皇子”ね?
私にとってクレアンは“皇子”。
“鼠”の時間を1人で駆け回っていた私の前に現れてくれた、私の“皇子”だよ。」
何故かこの胸が悲鳴を上げてきて、その悲鳴を聞きながらもクレアンにそう伝えた。
私からパッと視線を逸らしてしまったクレアンに、そう伝えることは出来た。
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クレアンは紺色の髪色だけど“奇跡”を起こせるから、初代国王の嘆きが聞こえた?」
「そうだな、聞こえた。
“欲深いことが美徳”とされる王族達、それを正して欲しいと。
“己の為の欲深さ”ではなく“民の為の欲深さ”、それが美徳であると。」
「私達も“民”なんだよね?
クレアンはそう考えてくれているんだよね?
名前もないけど・・・あ、でもみんなあるのかな。
覚えていないだけで、みんな名前をちゃんと持っているのかな。」
丘の上から“鼠の地”の沢山の炎の光りを見下ろす。
「さっき会った男の息子、オルセオは私の1番大切な仲間。
アンナである私に剣棒を渡してくれて使い方も教えてくれた。
私が盗んできた食べ物をみんなから返してくるように怒られていた中、1番最初に食べてくれたのはオルセオ。
凄く凄く美味しそうな顔で食べてくれて、そのオルセオの姿を見て他のみんなも口にした。」
何も言わないクレアンが私の隣に並んだ。
揺れる炎の光りの円を身に纏うクレアンが。
「今からそのアントに生みの親の話をしてくる。
そして、王宮の人間に芋を2つにして欲しいと一緒に言って欲しいと頼んでみる。
みんなから反対される中、私の分の剣棒を王宮の人間に求めてくれたのはそのアントなの。
鞭で打たれるかもしれないのに剣棒を求めてきてくれた。」
腰に差している剣棒を手に取り、この胸に抱き締める。
「王宮の人間は“鼠番”に戻っているのかもしれない。
あの王宮は不自然なくらいに死角が多くてそこに見張りもいない。
“鼠”の罠だと思っていたくらいに。
まずは芋を貰えたら次は武器を求めてみる。
ここのみんなの意識を変える為に、まずは武器をその手に持たせたい。
みんなの胸はあまりにも弱いから。
まずは強い武器を手に持たせてその胸に強さを抱かせたい。」
そう言ってから、何も言わないクレアンのことを見た。
クレアンはやけに深刻そうな顔で“鼠の地”を見下ろしている。
そんなクレアンの横顔を見詰めながら言った。
「ありがとう、皇子。」
私の言葉にクレアンはゆっくりと私の方を見て、そしてその目を少しだけ揺らした。
「身分の皇子ではなくて、誉め称える方の“皇子”ね?
私にとってクレアンは“皇子”。
“鼠”の時間を1人で駆け回っていた私の前に現れてくれた、私の“皇子”だよ。」
何故かこの胸が悲鳴を上げてきて、その悲鳴を聞きながらもクレアンにそう伝えた。
私からパッと視線を逸らしてしまったクレアンに、そう伝えることは出来た。
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