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─────────────・・・・
自分が目を閉じていたことに気付き、それには慌てて瞼をこじ開けた。
そしたらアント殿下の部屋の中には月の光りが少しだけ入り、暗い服を身体に纏っていくクレアンの後ろ姿が目に入った。
「子作り、したの・・・?」
身体には何の違和感もなくクレアンの後ろ姿に聞くと、クレアンは私のことを見ることなく答えた。
「僕が扉を閉めた後にユニザレス陛下がいなくなったのが気配で分かりましたのでしていません。
アンナ姫も意識を失うように寝てしまいましたし。」
「そうなんだ・・・。
私どれくらい寝てた?」
「3時間くらいですね。」
「そんなに!?」
驚きながらベッドから起き上がり床に足の裏をつけると、暗い服を着終わったクレアンがゆっくりと私の方を向いた。
「ユニザレス陛下がアンナ姫に目を付けていることについて、そしてアント殿下とアンナ姫の子作りについて、この2つをどうしていくか考える必要がありますね。」
「うん、そうだね。」
まだ何も着ていない自分の身体を隠しながら立ち上がろうとした。
そしたらクレアンが私のことを眺め続けていて・・・
私の身体はフワッと少しだけ宙に浮き、またベッドの中へと戻された。
《今宵は“鼠の地”へと行ってくる。》
私の頭の中でクレアンの声が響く。
「私も一緒に行く!!」
《お前はそこで待機してろ。
ユニザレスがまた部屋に来るかもしれないからな。
そしたら強く強く強く、鳴け。》
「分かったよ・・・。」
《そしたら空を飛んで戻ってくる。》
「クレアン、空も飛べるようになったの?」
《空を飛ぶように走り戻ってくる。
実際に空を飛ぶのは訓練中だな。》
「だから私の身体が宙に浮いたんだ?」
アント殿下の部屋の窓をクレアンが静かに開けバルコニーへと出ると、ムワッと生暖かい空気が部屋の中に入ってきた。
《夜が終わる前には戻る。》
バルコニーの手すりの上に身を乗り出したクレアンが私の頭の中にそう伝えてきた。
暑い季節の夜、クレアンの真っ白な手足も全て暗い色の服で覆われ、目元から下も暗い布で覆っている。
夜の黒に溶け込めるような姿のクレアンに深く頷くと、クレアンも深く頷き・・・
ヒラリ───────────....
と、バルコニーから消えた。
姿は消えた。
でも・・・
月があまり出ていない夜、夜の黒の中で炎のような光りが王宮の中を尋常ではないスピードで駆け回っているのが分かる。
その炎が見えなくなるまで、私はバルコニーからクレアンを見送っていた。
「“奇跡の皇子”・・・。」
この国では深い紺色の髪の毛を持って生まれた人間は奴隷となる。
奴隷は“鼠”といわれ家畜以下の扱いを浮けていた。
そんな“鼠”の前に現れたのがクレアンだった。
揺らめく炎のような光りの円をその身体に纏い、私達の前に現れた。
“奇跡の力”を持って、現れてくれた。
自分が目を閉じていたことに気付き、それには慌てて瞼をこじ開けた。
そしたらアント殿下の部屋の中には月の光りが少しだけ入り、暗い服を身体に纏っていくクレアンの後ろ姿が目に入った。
「子作り、したの・・・?」
身体には何の違和感もなくクレアンの後ろ姿に聞くと、クレアンは私のことを見ることなく答えた。
「僕が扉を閉めた後にユニザレス陛下がいなくなったのが気配で分かりましたのでしていません。
アンナ姫も意識を失うように寝てしまいましたし。」
「そうなんだ・・・。
私どれくらい寝てた?」
「3時間くらいですね。」
「そんなに!?」
驚きながらベッドから起き上がり床に足の裏をつけると、暗い服を着終わったクレアンがゆっくりと私の方を向いた。
「ユニザレス陛下がアンナ姫に目を付けていることについて、そしてアント殿下とアンナ姫の子作りについて、この2つをどうしていくか考える必要がありますね。」
「うん、そうだね。」
まだ何も着ていない自分の身体を隠しながら立ち上がろうとした。
そしたらクレアンが私のことを眺め続けていて・・・
私の身体はフワッと少しだけ宙に浮き、またベッドの中へと戻された。
《今宵は“鼠の地”へと行ってくる。》
私の頭の中でクレアンの声が響く。
「私も一緒に行く!!」
《お前はそこで待機してろ。
ユニザレスがまた部屋に来るかもしれないからな。
そしたら強く強く強く、鳴け。》
「分かったよ・・・。」
《そしたら空を飛んで戻ってくる。》
「クレアン、空も飛べるようになったの?」
《空を飛ぶように走り戻ってくる。
実際に空を飛ぶのは訓練中だな。》
「だから私の身体が宙に浮いたんだ?」
アント殿下の部屋の窓をクレアンが静かに開けバルコニーへと出ると、ムワッと生暖かい空気が部屋の中に入ってきた。
《夜が終わる前には戻る。》
バルコニーの手すりの上に身を乗り出したクレアンが私の頭の中にそう伝えてきた。
暑い季節の夜、クレアンの真っ白な手足も全て暗い色の服で覆われ、目元から下も暗い布で覆っている。
夜の黒に溶け込めるような姿のクレアンに深く頷くと、クレアンも深く頷き・・・
ヒラリ───────────....
と、バルコニーから消えた。
姿は消えた。
でも・・・
月があまり出ていない夜、夜の黒の中で炎のような光りが王宮の中を尋常ではないスピードで駆け回っているのが分かる。
その炎が見えなくなるまで、私はバルコニーからクレアンを見送っていた。
「“奇跡の皇子”・・・。」
この国では深い紺色の髪の毛を持って生まれた人間は奴隷となる。
奴隷は“鼠”といわれ家畜以下の扱いを浮けていた。
そんな“鼠”の前に現れたのがクレアンだった。
揺らめく炎のような光りの円をその身体に纏い、私達の前に現れた。
“奇跡の力”を持って、現れてくれた。
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