今宵、鼠の姫は皇子に鳴かされる

Bu-cha

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「クレアン、本当に・・・?」



月が隠れている夜の黒の中、ベッドの上で眼鏡をしていないクレアンが私のことを見下ろしている。
それが黒の中でも不思議と分かる。
クレアンはその身体を中心に、揺らめく炎のような光りの円を纏っているから。



だからクレアンの姿は夜の黒の中でもよく見える。



私には輝いて見えている。



ガチガチに緊張している私のナイトドレスをクレアンは素早く脱がしていく。
まるで慣れているかのように脱がしていく。



「こんなこと、バカげてる・・・!!
クレアン・・・!!」



「アントと呼べ。
そろそろあの強欲王が来るだろうからな。
来たことに気付いても気付いていないフリをしているんだぞ?
俺が上手くやる。」



「でも・・・!!
子作りまでするんでしょ・・・!?
避妊薬も飲まないで・・・!!」



初夜でした時、アント殿下と合意の上で私は避妊薬を飲んでいた。



「王族で3年も妊娠しないのは確かに問題だからな。
そろそろ他の正室や側室を迎えろという話が出てくる頃かと思っていたら、国王陛下自らアンナに子種を注ごうとしてくるとはな。」



「でも・・・だからって・・・」



「アンナ。」



クレアンが・・・いや、アント殿下が真剣な瞳で裸になった私のことを見詰めてくる。



「お前は鼠だろ?元奴隷の鼠。」



そう言って・・・



クレアンが・・・いや、アント殿下が私の胸の真ん中を指先で少しだけ触れてきた。



そこには・・・



そこには奴隷である証、“✕”の焼き印が刻まれている。



そして・・・



素早く裸になったアント殿下、その胸の真ん中にも私と同じ“奴隷の焼き印”がある。



「名前もなく番号を付けられ、死ぬまで家畜以下の扱いを受け、使い捨てされるだけの人生。
アンナ・・・いや、王都管轄の奴隷、8256143964。
俺と子作りをするくらい何でもないだろ?」



「でも・・・っ」



「何だよ、お前・・・何しにここに来たんだよ?」



「だって、クレアンと・・・いや、アント殿下と子作りするなんて・・・。
これはタリスと代わって貰いたかった。」



私の言葉にアント殿下が乾いた声で笑った。



「今からではもう遅い。
日は暮れ今宵の時間は始まった。
動くぞ。」



アント殿下が怖いくらい鋭い瞳で私に言う。



「鼠の時間だ。」



その言葉を聞き・・・



私は深呼吸をしてから小さく頷いた。



「分かったよ・・・、皇子。」



鼠の皇子であるクレアンに・・・いや、アント殿下にそう答えた。
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