【完】秋の夜長に見る恋の夢

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そして、私を見た・・・。



嬉しそうな顔で・・・。




心底幸せそうな顔で・・・。




心底幸せでしかないような顔で・・・。




そんな顔で・・・




「小町。」




私の名前を呼んだ。




「この着物どう？」




武蔵の目の前で両手を広げゆっくりと回ってみせた。



武蔵のことを見上げると・・・武蔵は照れたような顔をして・・・



「うん、いいね。」



「いいねってどういう“いいね”？
可愛いってこと？美しいってこと？」



「うん。」



そう返事をして顔を真っ赤にしている。



そんな武蔵の顔を見て私の顔も熱くなっていく。



だって、武蔵が眼鏡を外しているから。



「今日はコンタクトなんだ？」



「今日は勝負の日だからね。」



「婚姻届を出すこと？・・・と、あれか。」



私が聞くと武蔵は“真剣”な顔で頷いた。



今日は婚姻届を提出した後に加賀製薬で私と武蔵の結婚発表がある。
その際に武蔵も少し話すことになっているので、その勝負でもあるのだと分かった。



「小町も勝負の日だよね？」



「そうだね、私が副社長に就任することも発表される。」



「そんなに美しい姿で小町の“言葉の刀”を振るわれたら、全員が小町の為に戦いたくなるよ。」



そんな嬉しいことを言ってくれた武蔵に、玄関に準備していたお弁当箱を渡す。
それを心底嬉しそうな顔で武蔵は受け取った。



「今日も唐揚げだよ。
連日唐揚げだけど本当に大丈夫？」



「随分と食べられてなかったから、これまでの分も。
どこの唐揚げを食べても小町と小町のお母さんの唐揚げには敵わなかったから。
やっとこのお弁当を受け取れて本当に嬉しいんだ。
今日もありがとう。」



“ありがとう”と言う。
武蔵が、“ありがとう”と。