【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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「さて。きみに惚気話をしたことは、セレナには内緒にしておいてくれよ?」
「どうしてですか?」
「照れ臭いじゃないか」

 オパールの耳が赤い。照れ臭いと思っているのは事実のようだ。
 私は小さく笑う。

「愛していらっしゃるんですねえ。私、そういう気持ちがわからなかったんですが、なるほどって思えました」
「からかってくれるな」
「からかってなんかいませんよ。素敵だなあって心から感じています」

 私が正直な気持ちを告げると、彼は顔を真っ赤にして横を向いた。

「き、きみだって、アメシストくんとシトリンくんを大事に思っているんだろう? オレのそれと同じようなものじゃないかもしれないが、家族みたいに愛しているんじゃないのか?」

 そう問われて、私は真面目に考える。
 家族……家族?
 家族を愛していたかと言われると違和感がある。彼らから愛されていたとも思えない。大事にされていただろうが、それは私に商品的な価値があるからで、私という人格には興味がなさそうだった。少なくとも私にはそう見えていた。
 私は首を傾げる。

「家族みたいに愛するということが理解できないのですが」
「……オレにはその質問が理解できないんだが?」

 互いに顔を見合わせて目を瞬かせた。
 沈黙。

「――ああ、いや、この話は終わりにしようか。オレの情動は人間に似せて呼び起こされているものだし、きみらのそれとまったく一緒というわけでもないだろうからな」

 そう告げるとオパールは立ち上がる。

「そろそろあいつらも風呂から出てくるだろ。きみの部屋まで送ろう」

 セレナからの通信があったタイミングで、私を食堂に残してアメシストとシトリンは先に入浴に行っていたのだった。なので、今はオパールと私の二人きりなのである。

「それはありがたいです」

 答えて私も立ち上がる。一人で部屋に帰れないわけではないのだが、誰かにそばにいてもらいたい気分だったのだ。

「あのふたりのことで何か困ったら相談してくれていいからな。無理に迫られても、応じることはないんだから」

 心配されている。
 アメシストから身体の関係を迫られているところを割って入ってきてくれたのだから、先輩として気にかけてくれるのだろう。ありがたい申し出だが、私はゆっくり首を横に振る。

「それは……困っていないと言ったら嘘になりますけど、自分でどうにかしたいので。今までどおりの対応をしていただけるとありがたいです」
「となると、タイミングを見計らって、未遂で終われるように止めに入ったほうがいい、と?」

 真顔で言われたので、私は吹き出した。

「そういうのとはちょっと違うと思うんですが。止めていただけたら助かります」
「了解」

 オパールは深刻になりすぎないようにウインクしてくれた。
 不思議。このひとは信用していいと思えるのはどうしてなのだろう。
 私は安堵してオパールと一緒に部屋に戻ることにした。



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