【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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初めて口にしたサツキイチゴは瑞々しくて、付き纏っていた男から逃げていたことで渇いた喉を潤した。


「神様も何で僕に、こんなスキルを与えたんだろう?」


死に急ぐ僕に与えても無駄でしかないのに、どうして・・・?
そんなことを零しても誰も答えてくれない。

今日は疲れたから、もうココで寝ちゃおう。
僕を支えてくれる大樹の枝が不自然に見えない程度に変化していき、柔らかい葉っぱが伸びてきて寝返りで落ちないように囲いを作ってくれる。

うん、なんだろ。すごく不思議な光景を目の当たりにしてる気分・・・
眠いし、まぁいいや。


「みんな、おやすみなさい」


一人寂しく寝るにしても、僕の為に寝床を作ってくれた樹々に就寝の挨拶をした。
そうすることが至極当たり前の行為なのだが、この世界にはそんな概念は無い。

僕が言葉をかけると風もないのに樹々や草花が揺れ、香りを運んで答えてくれた気がして嬉しかった。
寝静まった後に小さな声がポソポソと話し声が聞こえてきた。


『ねぇ、この人間は不思議な力を宿してるのね』

『うん、不思議な力を宿してる』

『こんなに澄んだオーラを持ってるのに誰の目にも留まらないなんて寂しくないのかな?』

『寂しいから大樹様に招かれたんだよ』

『そっかぁ。ココは、かつて人間達が住んで離れて行った場所だもんねぇ』

『そうそう。人間は勝手だよねぇ』

『新しいとこを見つけると力ずくで奪っていくクセに、飽きたら簡単に捨てて離れていくんだもん』

『ほんと勝手な生き物だよねぇ』

『でも、この人間は大樹様が招いた純粋な魂を持った者だから迷わせちゃダメなんだってさ』

『死に場所を探してるって呟いてたのに殺しちゃダメなんだってさ』

『大樹様のいうことは守らないとね』

『そうだね。守らないとね』


現世では辛い思いをした碧䒾を招いたのは神様だけではなかった。
転生した場所によっては、優しく綺麗な魂を持った者だけが加護を受けるということが稀にあるという。
碧䒾が「死にたい」という気持ちがなくなる日が来るのかは、本人次第ということだろう。



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