【完】秋の夜長に見る恋の夢

11

11-57

そんなことを言わせてしまった・・・。
俺が小町の結婚相手に選ばれなかったせいで、小町にそんなことを言わせてしまった・・・。



苦しくなりながらも、笑いながら小町に伝える。



「俺は、薬を創るから。」



“あの夜”、何度も言った。
何度も何度もそう伝えた。
俺には一刀しか極められないと。
でも、その一刀なら極められると。



その一刀で勝ち取れたら小町の結婚相手にしてくれると小町のお父様が言っていたから。



だから、俺は薬を創る・・・。



それしかないから・・・。



俺にはそれしかないから・・・。



そう思っていた時、小町が悲しそうな顔で笑った。



俺に何も期待していないような、悲しそうな笑顔で・・・



「好きな人、いる？」



“あの夜”、何度も聞いてきたその質問をされた・・・。



悲しそうな笑顔で・・・。



悲しそうでしかないような笑顔で・・・。



婚約者が決まった夜に聞かれた時は意地悪な質問だと思ったけど、何も期待されていないようなこの笑顔で聞かれると確認されているのかと思った。



俺がちゃんと何もなかったことに出来ているのか・・・。



小町は覚悟を決めているから・・・。



小町は親が決めた人とだけ付き合うから。
親が決めた人にだけ恋をするから。



“あの夜”だけだったから。
俺とは“あの夜”だけだったから。
選ばれなかった俺とは、“あの夜”だけだから。



確認されているようにしか思えなくて、こう答えるしかなかった・・・。



「いないよ。」



．