【完】秋の夜長に見る恋の夢

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翌日・・・



「俺にも出来そうな家事ってあるかな？」



この前飲みに行ってくれた新卒の女の子に聞いてみた。



「家事ですか・・・？
矢田さんが、ですよね・・・？」



「うん、俺が。」



「え～・・・っと、どうしたんですか？」



女の子は答える代わりにそう聞いてきた。



それには苦笑いで・・・。



小町が・・・パジャマ姿ではなく綺麗な服で薄く化粧までしていた。



婚約者が決まったからだと思う。



あの可愛いパジャマ姿と素顔は、もう結婚する相手にしか見せないのだと思う。



覚悟を決めている。
小町は覚悟を決めている。



俺ではない人と結婚する覚悟を決めている。



「俺は父親の友人の家で居候させてもらっていて。」



「ああ、そうでしたよね！！」



「居候なんだ。俺はただの居候で。
薬しか創れない居候だから。
今まで家事は出来ないと疎かにしていたけど、1つでも出来るようになりたいんだ。」



小町と出会った頃、怒られたから。
一刀以外は疎かにしていたような人間だったから怒られた。



“嫌われる”
そう言って怒られたから。



それから色々なことに意識を向けて暮らすようになった。



それでも家事はやってこなくて・・・。



嫌われたくないと思った。
俺は小町にどう見えているのかとにかく不安で。



格好悪い男なはずで。
薬を創る以外は疎かになるような人間。
19歳だった小町を夢中で抱いたような人間。
結婚相手になると宣言したのに選ばれなかった人間。



あの屋敷と最寄り駅だけしか一緒にいることを許されない人間。



すぐ隣の小町の部屋を訪ねることも、小町を俺の部屋に誘うことも許されない人間。



格好悪い・・・。
俺はただの格好悪い居候で・・・。



覚悟を決めている小町を見て、俺も少しでも成長したいと思った。
居候なら居候らしく、家事の1つでも出来る姿を小町に見てもらいたいと思った。



少しでも格好悪くないように・・・。



少しでも、小町にとって格好悪い男に見えないように・・・。



「皿洗いとか・・・ですかね・・・？」



女の子が悩みに悩んで出してくれた案。
その日の定時後に練習してくれた食器洗いでは、いくつかのコップを割って女の子を慌てさせてしまった・・・。