【完】秋の夜長に見る恋の夢

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俺の言葉に小町が心の底から嬉しそうに、幸せそうに笑った。
その笑顔を見て俺も幸せを感じる・・・。



「今だけ・・・この夜だけ、私と付き合って、武蔵。」



「今だけ？」



「うん・・・今だけ。この夜だけ。
ちゃんと付き合うのは親が選んだ相手としないとだから・・・。
私は・・・親が選んだ相手と付き合わないといけないから・・・。
だから、だから・・・この夜だけ・・・。」



それを言われるとこれには悩んでしまう。
この夜だけとは言っても、そんなことをしてしまったら・・・。



小町が幸せになれないかもと、そう思ってしまう・・・。



俺に恋をしてくれていて・・・。
そして、この夜だけとはいえ俺と付き合って・・・。



そんなことをしてしまったら、親が選んだ相手と小町が幸せになれないかもしれない・・・。



婚約者候補がいる。
小町には既に婚約者候補がいる。



俺は薬しか創れないから。
あの村田隼人も婚約者候補から外れるくらいの人が、今は小町の婚約者候補。



その人ではなく、俺が選ばれるのか・・・。
俺が・・・一刀しか極められないような俺が・・・。



俺が選ばれなかった時、小町はその人と幸せになってほしいとは思うから・・・。



その人と・・・俺ではないその人と・・・幸せになってほしいとは思うから・・・。



そう思いながらも苦しくなっている時、小町が・・・目を開けた。



力が抜けた顔で・・・



なのに・・・



なのに・・・



目に力を込めた・・・。



柔らかいのに濃く光る、桜色に見えるような力を・・・込めた。



その目で見詰められると・・・



この目で見詰められると・・・



引き寄せられてしまう・・・



あっさりと、小町の間合いに入ってしまう・・・。



自然と上半身を少しだけ起こし、すぐ隣にいる小町を見下ろした・・・。



小町を見下ろして・・・



見下ろして・・・



近くまで・・・



もっと、近くまで・・・



近付いて・・・



この美しい器に、顔がすぐについてしまうくらいに、近付いて・・・



「付き合おう、小町。
今だけ、この夜だけ・・・。」



自然と出てきた言葉を言うと、小町が心の底から嬉しそうに、幸せそうに笑った。



そんな可愛い笑顔にまた引き寄せられて・・・



引き寄せられて・・・



小町の・・・



小町の唇に・・・



俺の唇が、触れてしまった・・・。