【完】秋の夜長に見る恋の夢

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「小町・・・一緒に寝るだけって・・・。」



「うん、一緒に寝てるよ？」



てっきり小町の部屋にいくのかと思ったら、まさかの俺の方の部屋で。
シングルベッドで俺にしっかりと抱き付いて寝ている小町・・・。



いつも通りパジャマはしっかりとお腹の中に入っていて、美人な顔の作りとそのギャップが可愛いなと思っていたけど・・・。



そんな力の抜けた格好で、力が抜けきった表情で、気持ち良さそうに目を閉じていて・・・。



俺にしっかりと抱き付いてくる手に力を入れながら・・・俺の二の腕に顔を埋めた。



「私、親が決めた人と結婚するんだ。」



「うん・・・。」



「嫌だな～・・・。」



そんな、初めて聞く言葉をサラッと言った。



「嫌だな、そんな人と結婚するの。
私は好きな人と結婚したかった。
好きでもない人となんて結婚したくなかった。」



「うん・・・。」



「私、武蔵が好き。」



そんな・・・



そんな・・・ことを、サラッと言ってきて・・・。



「私ね、武蔵のことが好きなんだ。
私は武蔵と結婚したい。
私は武蔵と結婚したいよ。」



サラッと、斬られた・・・。



あっさりと、あまりにもあっさりと斬られた・・・。



剣豪のはずの“武蔵”が、刀を構える隙もなかったくらいにあっさりと、斬られた・・・。



「俺も・・・小町のことが好きだよ。」



守ってきた間合いも何もなくなった。
だって、もう斬られたから。



俺はもう、小町には何度も斬られたから。



でもそれは刀ではなく“言葉”の刀。
だから傷は出来ない。
痛くもない。



深く・・・深く・・・入ってくる。



俺の器に、入ってくる・・・。



溜まっていく・・・。



一刀しか極められないような不器用な器の中に、小町が溜まっていく・・・。