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高校生の男の子が去って行った後、この子と並んで駅まで歩く。
お互いに無言で、歩く。
まだ咲きそうにない桜の木、駅まで桜並木になるはずの道をこの子と並んで歩く。
あの社長が自慢したくなる程の娘なのがよく分かった。
これは自慢したくなる。
だって、この子は・・・
この子は名前の通り・・・
「小町。」
俺がこの子の名前を呼ぶと、ピタッとこの子が立ち止まった。
それにつられ俺も立ち止まる。
そして、俺を見上げたこの子の・・・小町の顔を見て驚いた・・・。
美人な作りをしている顔を真っ赤にして、目には涙を溜めているのが分かるくらいで。
そんな可愛い・・・可愛いとしか表現出来ないような顔で俺を見上げてくる・・・。
そんな“小町”に言った。
「“小町”の名前の通り見た目は絶世の美女なのに、本当に最強の女の子だよね。
24歳のオジサンが女子高生に翻弄されるわけだよ。」
“小町”の名前の通り、見た目は絶世の美女。
そして、最強の剣士。
この子は小野小町のように歌は詠めないけれど、言葉の刀を使えるのだと思った。
時代を越えて、今でも多くの人が小野小町が詠んだ歌を知っている。
それくらい心に残る歌を詠めた小野小町。
だから、この子には“小町”という名前がとても似合っていると心から思った。
そしたら・・・
「そっちだって名前の通り、“武蔵”だね。
言葉の剣だったけど真剣勝負だったのが分かった。
お父さんの会社で薬の研究してるんだってね。」
“小町”が・・・そう言ってくれた。
俺は宮本武蔵のように多才ではないのに。
一刀しか極められない人間なのに。
そんな俺に小町が・・・俺の目に右手を少しだけ伸ばした。
「目に宿った力が私のお父さんに少し似てた。」
それには笑ってしまって・・・
「それを言うなら、小町の方が社長によく似ていたけどね。
さっきの男の子と対峙してる時の雰囲気は社長によく似てたよ。」
「それ・・・嬉しくはないから。
私は可愛い女子高生なんだけど。」
「見た目はそうだけど、中身は可愛いっていう表現ではないと思うよ?」
中身はなんという表現なのか・・・。
とにかく、最強の女の子だから“可愛い”とは違うとも思ってしまう。
そう思っていたら、小町が・・・
「武蔵・・・。」
と・・・。
俺の名前を呼んだ・・・。
それだけで・・・たった、それだけで・・・
心が震えた・・・。
俺の器が震えた・・・。
常に一定に、静かに保つように父さんから鍛えられていた俺の器が、震えた・・・。
見下ろした小町には、朝の強くも柔らかい陽の光りが当たっている・・・。
そろそろ2月も終わる・・・。
3月となり、春の季節がやってくる。
まだ咲かないと思っていた桜は、きっとすぐに咲くだろう・・・。
お互いに無言で、歩く。
まだ咲きそうにない桜の木、駅まで桜並木になるはずの道をこの子と並んで歩く。
あの社長が自慢したくなる程の娘なのがよく分かった。
これは自慢したくなる。
だって、この子は・・・
この子は名前の通り・・・
「小町。」
俺がこの子の名前を呼ぶと、ピタッとこの子が立ち止まった。
それにつられ俺も立ち止まる。
そして、俺を見上げたこの子の・・・小町の顔を見て驚いた・・・。
美人な作りをしている顔を真っ赤にして、目には涙を溜めているのが分かるくらいで。
そんな可愛い・・・可愛いとしか表現出来ないような顔で俺を見上げてくる・・・。
そんな“小町”に言った。
「“小町”の名前の通り見た目は絶世の美女なのに、本当に最強の女の子だよね。
24歳のオジサンが女子高生に翻弄されるわけだよ。」
“小町”の名前の通り、見た目は絶世の美女。
そして、最強の剣士。
この子は小野小町のように歌は詠めないけれど、言葉の刀を使えるのだと思った。
時代を越えて、今でも多くの人が小野小町が詠んだ歌を知っている。
それくらい心に残る歌を詠めた小野小町。
だから、この子には“小町”という名前がとても似合っていると心から思った。
そしたら・・・
「そっちだって名前の通り、“武蔵”だね。
言葉の剣だったけど真剣勝負だったのが分かった。
お父さんの会社で薬の研究してるんだってね。」
“小町”が・・・そう言ってくれた。
俺は宮本武蔵のように多才ではないのに。
一刀しか極められない人間なのに。
そんな俺に小町が・・・俺の目に右手を少しだけ伸ばした。
「目に宿った力が私のお父さんに少し似てた。」
それには笑ってしまって・・・
「それを言うなら、小町の方が社長によく似ていたけどね。
さっきの男の子と対峙してる時の雰囲気は社長によく似てたよ。」
「それ・・・嬉しくはないから。
私は可愛い女子高生なんだけど。」
「見た目はそうだけど、中身は可愛いっていう表現ではないと思うよ?」
中身はなんという表現なのか・・・。
とにかく、最強の女の子だから“可愛い”とは違うとも思ってしまう。
そう思っていたら、小町が・・・
「武蔵・・・。」
と・・・。
俺の名前を呼んだ・・・。
それだけで・・・たった、それだけで・・・
心が震えた・・・。
俺の器が震えた・・・。
常に一定に、静かに保つように父さんから鍛えられていた俺の器が、震えた・・・。
見下ろした小町には、朝の強くも柔らかい陽の光りが当たっている・・・。
そろそろ2月も終わる・・・。
3月となり、春の季節がやってくる。
まだ咲かないと思っていた桜は、きっとすぐに咲くだろう・・・。
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