【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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そして、1月5日。



「必要な物は夕方に届く手配になってるからね。」



「夕方なんだ?」



「うん、あんまり早いと娘さんを起こすからって。
寝るのが凄く好きな子なんだよね。」



そんな理由で荷物の手配が夕方になるくらい、社長の娘は過保護に育てられているらしい。
小学校6年生の拳のことを心配しているくらいだし。



そう思っていた時、チリン─....と・・・



何かの音が聞こえた。



見てみると、桜の柄になっている丸い鈴だった。



父さんがそれを俺に差し出してきた。



引き寄せられるようにそれを受け取る。



「1日に皆で初詣に行った時に買っておいた。
開運守りだよ。」



「そうなんだ。」



「鍵を失くさないようにこれに付けておきな。」



「鈴の音だから気付くかも。」



「うん、それに桜の柄だしね。」



「桜の柄が何?」



聞いた俺に父さんは俺の顔をジッと見た。



「この前見たけど、あれは多分そうなると思う。」



「何が?」



「加賀の娘さん。小町ちゃん。」



社長の娘が“小町”という名前らしい。
美人らしいので名前通りになって羨ましい。
現代では歌を詠む機会もないだろうし。



「絶対に刀を手放さないことだよ、武蔵。」



父さんがよく言うこの言葉を今日も言う。



「ヒビが入らない刀を父さんが持たせたから。
だから武蔵は刀を絶対に手放さないで。」



「うん。」



「もしも刀を手放した時は・・・」



「脇差しで戦う。刀なら俺は戦える。
刀なら右手でも左手でも戦える。
父さんが一刀を極めてくれたから。」



「そうだね、良い刀が常にこっちを向いているよ。
常に戦える状態でいる。」



父さんがそう言って、俺に笑い掛けた。



「夏季休暇や年末年始はこっちに来なね。」



「うん。」



そんな風に父さんと母さん、拳と別れた。
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