【完】秋の夜長に見る恋の夢

6

6-6

「何か・・・あった？」



あの後に大学に行くと、姫から少し驚いた顔で聞かれた。



「今日は少し体調悪くて。
でも少しだけね、段々良くなってきてる。」



「体調・・・？悪いの・・・？」



「朝起きた時からちょっとね。」



姫が綺麗な顔をあまりに驚いた顔にしているので笑ってしまった。



「だって、小町凄く良くなってるから。
幹がしっかりして、深くまで根がはってきてて。」



姫は・・・姫“も”、こういう感覚が結構ある子で。
武蔵のお父さんはもっと凄いんだけど、姫はたまにこういう発言を信頼している人にだけは言う。



「まだ花は咲かないの？」



「花は咲いてない、蕾もないね。
どんな花が咲くのか楽しみ。」



姫が綺麗な顔で楽しそうに笑ってくれる。
私のお父さんから既に私よりも色々な教えを受けている姫。
アルバイトで私のお父さんの秘書も始め、最近は忙しくて大学の後は全然遊べていない。



「私は結婚したら家に入るだけだからね～・・・。
今の時代、花嫁修業もそんなにないし。
私にはお茶も華も踊りもさせないし、お父さん何をしたいのかよく分からなくて。」



私がそう嘆くと姫がいつもより大きな声で笑った。



「今は小町がしたいことをさせてくれてるんだよ。
そのうちしたいことなんて何も出来なくなるような生活になるからね。」



「やっぱり結婚したらそうなるよね・・・。」



この嘆きには姫は何も返事をせず、優しい顔で私に笑い掛けただけだった。