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武蔵はいつも我が家の屋敷から少し離れた所でタクシーを降りる。
そこから夜の桜を見上げながら、武蔵とゆっくりと歩く。
「桜、あと少しで全部散っちゃうね。」
桜の花びらがヒラヒラと揺れながら落ちていくのを見ながら、すぐ隣に歩く武蔵に言った。
「来年もまた咲くからね。」
「それはそうだけど!!
今年の桜は終わっちゃう!!」
「でも、来年もまた咲くから。
来年も再来年も、その後も毎年咲くからね。」
「そうだね・・・。」
あと何年、私はこうして武蔵の隣を歩けるのか・・・。
親が決めた相手と結婚をする。
私は、親が決めた相手と結婚をする。
胸が苦しくなって、両手で抑えながら桜を見上げる。
「早く、花の色が色褪せたいな。」
「花の色?」
「小野小町の有名な歌があるでしょ?
花の色が色褪せちゃうやつ。
それで自分の美しさも衰えたなって。」
「あるね。色褪せたいの?」
「うん、そしたらやっと幕を下ろせるんだと思う。
早く色褪せてくれないと、私は幕を自分からは下ろせない。」
私がそう言うと、武蔵が立ち止まった。
それに気付いて私も立ち止まる。
不思議に思い武蔵を見上げると、武蔵は心底困った顔で笑っている。
「色褪せるどころか色が濃くなってるけど大丈夫?
女子高生は最強だから翻弄されていると思ってたけど、女子大生になってもっと巧みに剣を振るうから翻弄されっぱなしなんだけど。」
そんなことを心底困った顔で・・・。
心底嬉しそうな顔で・・・心底、幸せそうな顔で言う・・・。
そんな武蔵の周りを、桜の花びらがユラユラと揺れながら落ちていく・・・。
苦しくなってくる胸を両手で抑えながら武蔵を見ていたら・・・
武蔵がゆっくりと、口を開いた・・・。
そして・・・
そして・・・
「美しいよね・・・。
綺麗とか可愛いとか絶世の美女とか、そんな言葉でもなくて、小町は“美しい”がよく似合うね。」
そんな・・・嬉しくなってしまうことを言ってくれ・・・
武蔵は目に鋭い光りを宿らせた・・・。
「戦ってくるよ、俺が出来る戦い方で。」
そう言った後、武蔵は歩きだした。
我が家の屋敷へ・・・。
私と武蔵が一緒に暮らす屋敷へ・・・。
武蔵が右手で出してくれた鍵からは、いつものように桜の鈴の音が響いた・・・。
チリン──...と・・・。
幸福な音が、今日も私の器の中に響いた・・・。
そこから夜の桜を見上げながら、武蔵とゆっくりと歩く。
「桜、あと少しで全部散っちゃうね。」
桜の花びらがヒラヒラと揺れながら落ちていくのを見ながら、すぐ隣に歩く武蔵に言った。
「来年もまた咲くからね。」
「それはそうだけど!!
今年の桜は終わっちゃう!!」
「でも、来年もまた咲くから。
来年も再来年も、その後も毎年咲くからね。」
「そうだね・・・。」
あと何年、私はこうして武蔵の隣を歩けるのか・・・。
親が決めた相手と結婚をする。
私は、親が決めた相手と結婚をする。
胸が苦しくなって、両手で抑えながら桜を見上げる。
「早く、花の色が色褪せたいな。」
「花の色?」
「小野小町の有名な歌があるでしょ?
花の色が色褪せちゃうやつ。
それで自分の美しさも衰えたなって。」
「あるね。色褪せたいの?」
「うん、そしたらやっと幕を下ろせるんだと思う。
早く色褪せてくれないと、私は幕を自分からは下ろせない。」
私がそう言うと、武蔵が立ち止まった。
それに気付いて私も立ち止まる。
不思議に思い武蔵を見上げると、武蔵は心底困った顔で笑っている。
「色褪せるどころか色が濃くなってるけど大丈夫?
女子高生は最強だから翻弄されていると思ってたけど、女子大生になってもっと巧みに剣を振るうから翻弄されっぱなしなんだけど。」
そんなことを心底困った顔で・・・。
心底嬉しそうな顔で・・・心底、幸せそうな顔で言う・・・。
そんな武蔵の周りを、桜の花びらがユラユラと揺れながら落ちていく・・・。
苦しくなってくる胸を両手で抑えながら武蔵を見ていたら・・・
武蔵がゆっくりと、口を開いた・・・。
そして・・・
そして・・・
「美しいよね・・・。
綺麗とか可愛いとか絶世の美女とか、そんな言葉でもなくて、小町は“美しい”がよく似合うね。」
そんな・・・嬉しくなってしまうことを言ってくれ・・・
武蔵は目に鋭い光りを宿らせた・・・。
「戦ってくるよ、俺が出来る戦い方で。」
そう言った後、武蔵は歩きだした。
我が家の屋敷へ・・・。
私と武蔵が一緒に暮らす屋敷へ・・・。
武蔵が右手で出してくれた鍵からは、いつものように桜の鈴の音が響いた・・・。
チリン──...と・・・。
幸福な音が、今日も私の器の中に響いた・・・。
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