【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
47 / 235
5

5-9

しおりを挟む
隼人を見送った後、24歳の男の人と自然と並び屋敷の扉の前に。
鍵を鞄から出そうとしたら、隣の人が先に鍵を取り出して・・・



チリン──...と、鈴の音が。



見てみると、この人が右手に持っている鍵には桜の模様になっている丸い鈴が付いている。



「その鈴可愛いね、ちょっと意外。」



「これ?父親からここでお世話になる日の朝に渡されたんだよね。
すぐに鍵をなくすから、これに付けておくようにって。
家族でよく行く神社の開運守りらしい。」



この人はそう言いながら家の扉をゆっくりと開けてくれた。
それに笑いながら私は先に屋敷の中に入る。



「レディーファーストとか出来るようになったんだ!?」



「女子高生に叱られない為に、初めて色んなことにも意識を向け始めたよ。
女子高生って最強の生き物だよね。」



「最強に可愛いでしょ?」



「顔はそういう顔をしてるね。」



「・・・はあ!?中身は!?」



「中身・・・?
キミの中身って、それ可愛いっていう表現なの?」



「こんなに可愛い女子高生に何という失礼なことを!!
24歳のオジサンにこんなに構ってあげる女子高生なんて私くらいなんだから、大切にしてよね!!」



そんな会話を今日もこの人としながら、我が家の屋敷・・・長い長い廊下をこの人と歩いていく。



この人との会話は、姫と話すより透や隼人と話すより、何だか楽しくて。
こんなに誰かに自分をさらけ出してしまったのは初めてだった。



それでも、この人は楽しそうに笑ってくれるから・・・。
だからもっと、自分も知らなかったような自分が出て来てしまう。



「後でダイニングテーブルに集合ね!!
お腹減っちゃった!!」



「俺も。夜ご飯はまだ食べてなくて。」



「今日もなの!?
朝ご飯もお昼ご飯もあんなに食べる人なのに、夜は食べなくてよくお腹減らないね!?
夜ご飯は少食だから朝もお昼もお腹が減るんじゃない!?
朝から唐揚げを大量に揚げる私の身にもなってよ!!」



「社員食堂があるからお弁当はいらないのに。」



「それだと負けたように感じるから嫌なの!!
なんか、貴方といると負けたくないって思っちゃう!!」



そう言ってから、私の部屋の扉の取っ手に手を掛けた。
そして、隣の部屋に入ろうとしているこの人を見る。



こんなに負けず嫌いな自分がいたことに驚くしかなくて。
何故だか、この人には負けたくないと思ってしまう。
この人に「参りました」と言わせたいと思ってしまう。



「俺もだよ。こんなに必死に戦ったことなんてないのに、初めてこんなに戦ってる相手が女子高生になってる。
最強だからね、女子高生は。」



この人が楽しそうな顔で笑って部屋に入っていった。
この人が我が家の屋敷に来てから、私は眠ることよりもこの人と過ごす時間の方が楽しくてなってきていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さな恋のトライアングル

葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児 わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係 人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった *✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻* 望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL 五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長 五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~

けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。 してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。 そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる… ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。 有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。 美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。 真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。 家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。 こんな私でもやり直せるの? 幸せを願っても…いいの? 動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

初めから離婚ありきの結婚ですよ

ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。 嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。 ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ! ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。

処理中です...