【完】秋の夜長に見る恋の夢

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加賀の本家には、代々女の子しか産まれない。
女の子1人だけしか産まれない。
不思議と、産まれない。



だから過去の加賀製薬の代表取締役達は、全員が婿養子だった。
私の“父親”も・・・。
そして、この人もそうなる・・・。



慣れた様子でまた食器洗いをしてくれているこの人の後ろ姿を見る。
この人の唯一出来る家事が食器洗いで。
他はとにかく生活力のない人で。



仕事は・・・薬を創り出すことだけを極めている人。
そんな人を“父親”が、“父親”というか“社長”が、私の相手として選んだ。



「明日、お弁当作ろうか。」



食器洗いが終わったタイミングでこの人に言うと、少し無言になった。
迷惑なのかなと思っていたら・・・



「落とさないといいのですが・・・。」



「今日も何か落としたの？」



「はい・・・。」



「大丈夫？何か病気なんじゃないの？」



「病気・・・ですか・・・。」



この人が少し悩んだ様子で、ゆっくりと私を振り返った。



ゆっくりと振り返って・・・



私を見てから困ったように笑った。



「病気ですね。」



「早く病院に行ってきてよ。」



「病院ですか・・・。」



困った顔で笑ったまま、この人が荷物の方へ歩いていく。



「お風呂、いいですか？」



その言葉には・・・心臓が跳ね上がった・・・。