10 / 235
1
1-10
しおりを挟む
─────────
──────
....*・...・*..・*・.
大きな大きなお屋敷。
その中で私は鼻歌を歌いながら小走りで進んでいく。
大股ではなく、小股で。
自分の姿を見下ろして自然と笑顔になってくる。
今日は19歳の誕生日。
お父さんとお母さんと料亭で食事をしたので、誕生日にと買ってくれた薄ピンク色の着物を着ている。
可愛い可愛い着物。
その着物を着て、お屋敷の中を小走りで進んでいく。
長い長い廊下・・・。
そこに、私の大好きな人の後ろ姿が。
見付けた瞬間、抑えられないニヤけた顔と大きく高鳴る心臓の音。
この可愛い着物をあの人は何て言ってくれるか。
どんな顔をしてくれるか。
私は“美人”だから。
“小町”という名の通り、私は“絶世の美女”と言われている。
小野小町のように歌は詠めないけれど、私は“絶世の美女”とは言われている。
そんな私がこんなに可愛い着物姿になって、あの人は何て言ってくれるか。
どんな顔をしてくれるか。
考えただけでドキドキとしたしワクワクとした。
胸を両手で抑えながら大好きな人の名前を呼んだ。
大好きな大好きな人の名前を。
「武蔵!!!」
大好きな武蔵が立ち止まり、ゆっくりと・・・
ゆっくりと、振り返る・・・。
ゆっくりと振り返って・・・
振り返って・・・。
私を、見た・・・。
嬉しそうな顔で・・・。
心底幸せそうな顔で・・・。
心底幸せでしかないような顔で・・・。
そんな顔で・・・
「小町。」
私の名前を呼んだ。
「お帰り。楽しかった?」
「楽しくはない、お父さん雑談とかしないから。
お母さんと大学の話とか武蔵との話とかしたくらい。」
「そうなんだ、小町のお父さんは厳しい人だからね。
でも小町に着物をプレゼントしようって提案したのも今日の食事の予約もお父さんがしたらしいよ?」
「そうなんだ・・・。」
武蔵に言われてそれには少し驚いた。
でもお父さんには昔からそういうところがある。
笑ったり楽しい話は出来ないけど、昔から私のことをよく考えてくれているのはなんとなく感じていた。
「それより・・・この着物どう?」
武蔵の目の前で両手を広げゆっくりと回ってみせた。
また武蔵のことを見上げると・・・武蔵は照れたような顔をして・・・
「うん、いいね。」
「いいねってどういう“いいね”?
可愛いってこと?」
「うん。」
武蔵が恥ずかしそうに笑って頷いた。
そんな武蔵の顔を見上げながら笑った。
直接的な言葉はあまり言わない人だけど、武蔵はいつも優しくて・・・
私のことが好きなのかなと思っている。
好きなのかなと思っているし、私も武蔵のことが好きで。
出会って4ヶ月くらいしか経っていないけど、好きになって。
私はいずれ親が選んだ人と結婚をする。
だからこの気持ちは秘密。
秘密にしたまま、私は好きでもない人と結婚をする。
加賀の一人娘に産まれた。
そして、お父さんが私を将来の社長の奥さんにしたいそう。
なので私は好きでもない人と結婚をする。
でも・・・
心の中で、武蔵のことをソッと思っているだけなら許して貰えるかなと思っている。
そう、思っている・・・。
「武蔵、これから何処いくの?」
「会社に少し行ってくる。」
「日曜日なのに?」
「うん、だから少しだけね。」
「じゃあ駅まで送っていく!!」
私がそう言うと、武蔵は凄く嬉しそうに笑った。
心底幸せそうな顔で笑った。
─────────
──────
....*・...・*..・*・.
──────
....*・...・*..・*・.
大きな大きなお屋敷。
その中で私は鼻歌を歌いながら小走りで進んでいく。
大股ではなく、小股で。
自分の姿を見下ろして自然と笑顔になってくる。
今日は19歳の誕生日。
お父さんとお母さんと料亭で食事をしたので、誕生日にと買ってくれた薄ピンク色の着物を着ている。
可愛い可愛い着物。
その着物を着て、お屋敷の中を小走りで進んでいく。
長い長い廊下・・・。
そこに、私の大好きな人の後ろ姿が。
見付けた瞬間、抑えられないニヤけた顔と大きく高鳴る心臓の音。
この可愛い着物をあの人は何て言ってくれるか。
どんな顔をしてくれるか。
私は“美人”だから。
“小町”という名の通り、私は“絶世の美女”と言われている。
小野小町のように歌は詠めないけれど、私は“絶世の美女”とは言われている。
そんな私がこんなに可愛い着物姿になって、あの人は何て言ってくれるか。
どんな顔をしてくれるか。
考えただけでドキドキとしたしワクワクとした。
胸を両手で抑えながら大好きな人の名前を呼んだ。
大好きな大好きな人の名前を。
「武蔵!!!」
大好きな武蔵が立ち止まり、ゆっくりと・・・
ゆっくりと、振り返る・・・。
ゆっくりと振り返って・・・
振り返って・・・。
私を、見た・・・。
嬉しそうな顔で・・・。
心底幸せそうな顔で・・・。
心底幸せでしかないような顔で・・・。
そんな顔で・・・
「小町。」
私の名前を呼んだ。
「お帰り。楽しかった?」
「楽しくはない、お父さん雑談とかしないから。
お母さんと大学の話とか武蔵との話とかしたくらい。」
「そうなんだ、小町のお父さんは厳しい人だからね。
でも小町に着物をプレゼントしようって提案したのも今日の食事の予約もお父さんがしたらしいよ?」
「そうなんだ・・・。」
武蔵に言われてそれには少し驚いた。
でもお父さんには昔からそういうところがある。
笑ったり楽しい話は出来ないけど、昔から私のことをよく考えてくれているのはなんとなく感じていた。
「それより・・・この着物どう?」
武蔵の目の前で両手を広げゆっくりと回ってみせた。
また武蔵のことを見上げると・・・武蔵は照れたような顔をして・・・
「うん、いいね。」
「いいねってどういう“いいね”?
可愛いってこと?」
「うん。」
武蔵が恥ずかしそうに笑って頷いた。
そんな武蔵の顔を見上げながら笑った。
直接的な言葉はあまり言わない人だけど、武蔵はいつも優しくて・・・
私のことが好きなのかなと思っている。
好きなのかなと思っているし、私も武蔵のことが好きで。
出会って4ヶ月くらいしか経っていないけど、好きになって。
私はいずれ親が選んだ人と結婚をする。
だからこの気持ちは秘密。
秘密にしたまま、私は好きでもない人と結婚をする。
加賀の一人娘に産まれた。
そして、お父さんが私を将来の社長の奥さんにしたいそう。
なので私は好きでもない人と結婚をする。
でも・・・
心の中で、武蔵のことをソッと思っているだけなら許して貰えるかなと思っている。
そう、思っている・・・。
「武蔵、これから何処いくの?」
「会社に少し行ってくる。」
「日曜日なのに?」
「うん、だから少しだけね。」
「じゃあ駅まで送っていく!!」
私がそう言うと、武蔵は凄く嬉しそうに笑った。
心底幸せそうな顔で笑った。
─────────
──────
....*・...・*..・*・.
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
小さな恋のトライアングル
葉月 まい
恋愛
OL × 課長 × 保育園児
わちゃわちゃ・ラブラブ・バチバチの三角関係
人づき合いが苦手な真美は ある日近所の保育園から 男の子と手を繋いで現れた課長を見かけ 親子だと勘違いする 小さな男の子、岳を中心に 三人のちょっと不思議で ほんわか温かい 恋の三角関係が始まった
*✻:::✻*✻:::✻* 登場人物 *✻:::✻*✻:::✻*
望月 真美(25歳)… ITソリューション課 OL
五十嵐 潤(29歳)… ITソリューション課 課長
五十嵐 岳(4歳)… 潤の甥


社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~
けいこ
恋愛
人生に疲れ、自暴自棄になり、私はいろんなことから逃げていた。
してはいけないことをしてしまった自分を恥ながらも、この関係を断ち切れないままでいた。
そんな私に、ひょんなことから同居生活を始めた個性的なイケメン男子達が、それぞれに甘く優しく、大人の女の恋心をくすぐるような言葉をかけてくる…
ピアノが得意で大企業の御曹司、山崎祥太君、24歳。
有名大学に通い医師を目指してる、神田文都君、23歳。
美大生で画家志望の、望月颯君、21歳。
真っ直ぐで素直なみんなとの関わりの中で、ひどく冷め切った心が、ゆっくり溶けていくのがわかった。
家族、同居の女子達ともいろいろあって、大きく揺れ動く気持ちに戸惑いを隠せない。
こんな私でもやり直せるの?
幸せを願っても…いいの?
動き出す私の未来には、いったい何が待ち受けているの?

ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

初めから離婚ありきの結婚ですよ
ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。
嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。
ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ!
ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。
アンコール マリアージュ
葉月 まい
恋愛
理想の恋って、ありますか?
ファーストキスは、どんな場所で?
プロポーズのシチュエーションは?
ウェディングドレスはどんなものを?
誰よりも理想を思い描き、
いつの日かやってくる結婚式を夢見ていたのに、
ある日いきなり全てを奪われてしまい…
そこから始まる恋の行方とは?
そして本当の恋とはいったい?
古風な女の子の、泣き笑いの恋物語が始まります。
━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━
恋に恋する純情な真菜は、
会ったばかりの見ず知らずの相手と
結婚式を挙げるはめに…
夢に描いていたファーストキス
人生でたった一度の結婚式
憧れていたウェディングドレス
全ての理想を奪われて、落ち込む真菜に
果たして本当の恋はやってくるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる