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23歳の誕生日の日、夜11時半過ぎ




あと少しで夜12時になろうとしている。
いつもはとっくにお風呂に入り終わっていてTシャツにハーフパンツ姿の時間だけど、私は若松さんが親の権力を使い出してくれたまだ店頭に並んでいないワンピースを着ていた。



キャメル色の秋らしいデザイン。
パーソナルカラーがオータムの私にはピッタリの色。



首元は閉じられているデザインだったのに、ビックリすることに若松さんがその場で数分掛けて直してくれた。
下品にならない程度に開いている胸元、そこには首に掛けられている若松さんがくれたネックレスが輝いている。



このワンピースに似合う大人っぽいお化粧もして、大人っぽく髪の毛もまとめた。



そんな姿で私は先生のことを待っていた。



あと数分で私の誕生日は終わってしまう。



それでも先生のことを待っていた。



私にも似合っているであろう大人っぽい姿で待っていた。



何度も何度も確認したスマホをもう1度確認する。
昨日の夜のメッセージも今日の朝のメッセージも私は返信をしなかった。
だからか今日の夜のことは先生から何の連絡もない。



それとも・・・



「まだ佐伯さんと一緒にいるのかな・・・。」



“凄くタイプ”らしいから・・・。



“朝人”は和泉かおりの若い頃が“凄くタイプ”らしいから・・・。



それを思い出しながら、“朝1番”だった場所へと続く階段を降りた。



そしたら、いた。



今日もいた。



“朝1番”だった場所に若い頃の和泉かおりがいた。



信じられないくらいに佐伯さんソックリの和泉かおりがいた。



「“朝人”・・・帰ってきてよ・・・。」



あの完璧な見た目で爽やかに笑うことが出来る気取った“先生”は、佐伯さんのことを選んだようだから。



私の誕生日に“おめでとう”と言ってくれるのは“朝人”だった・・・。



“先生”ではなく、“朝人”だった・・・。



「私、23歳になって大人っぽくなったよ・・・。
胸は成長しなかったけど、少しは大人っぽくなったよ・・・。
ビックリはさせられないくらいだけど、見にきてよ・・・。
またおっぱい見せてあげるから、なんならエッチもしてあげるから・・・。
早く帰ってきてよ・・・。」



誰もいないカウンターを眺めながら、呟いた。



それから、“朝人”と“先生”がいつも座っているカウンターの椅子に座った。
ギィ───────...という音が“朝1番”だった場所に響く。



しばらくその椅子の音を聞きながら先生と佐伯さんのことを考えていると、気付いた。



お店の中にある時計は夜12時を回り、私の23歳の誕生日の日は終わってしまっていた。
“朝人”も“先生”も来てくれない中、私の誕生日は終わった。



その事実には泣きそうになりながら時計を見上げ続けていると・・・



トントン────────....



という音が・・・



“朝1番”だったこの場所に聞こえた。



音の元を辿ると扉からで・・・。



こんなに夜中、それもお店はとっくになくなっているのにこの扉を叩かれ、怖い気持ちになっていると・・・



「千寿子、いる・・・?
こんな時間だけど夜飯・・・いい?」



控え目の声だけど、先生だとすぐに分かった。
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