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翌日
意識が深い所に沈んでいた時、“何か”の音で無理矢理浮上させられた。
回らない頭でその音を聞き、それが2階部分のブザーの音だと分かった。
遮光カーテンではないカーテンからは、すっかり明るい朝の光りが入ってきている。
時計を確認すると・・・
「は・・・?5時半・・・?」
それには驚きながら連打されているブザーの音には苦笑いになる。
枕元にあるスマホを確認すると、昨日私の連絡先を交換した先生から5時過ぎに着信とメッセージが1件ずつ入っていた。
《5時半に行くからな!!》
メッセージにはそう入っていて、“朝1番”のお店はなくなっているのに当時の時間とそう変わらない時間にこの家に来た先生には苦笑いになる。
Tシャツとハーフパンツで寝ていた自分の姿を見下ろし、着替えたい気持ちにもなるけれど・・・
あまりにも連打されているブザーの音を聞き、仕方がないのでこの姿のまま2階の玄関へと向かった。
そして、扉を開けると・・・
「千寿子、良かった・・・!!
何かあったのかと思ったからな!?」
「何かありましたよ・・・。
早朝に叩き起こされましたよ・・・。」
「高校の頃は朝4時には起きてただろ!!」
「お店が朝4時からだったので起きますよ。
でも今は9時までに出社すればいいので、7時半に起きてますから。」
「7時半!?遅すぎだろ!!
早寝早起きをするんだよ!!
どうせ遅くまで起きてたんだろ!?」
「夜は12時頃には寝てますよ。」
「・・・まあ、俺も忙しくてそのくらいだけどな。」
髪型は整えてありスーツを着て髭は伸びていない先生。
朝1番に、“朝1番”だった場所に完璧な姿で現れた先生を2階の玄関から入れ、そこから1階に降りられる階段で下に下りた。
「そういえば、先生は今どこに住んでるんですか?」
「ここから駅の方に歩いて5分くらいのマンション。」
昔は毎朝座っていたカウンターの席に先生が座ると、その椅子からはギィ──...という音が鳴った。
昔もよく聞いていたその音を聞き、嬉しくなりながら完璧な姿の先生をカウンター越しから見る。
「お帰りなさい、“先生”。」
“朝人”の顔ではないこの人に、“お帰りなさい”と伝える。
先生は嬉しそうな顔で、でも少しだけ照れたような顔で。
「ただいま、千寿子。」
そう言ってくれた。
“朝人”が帰ってくることはなかったけれど、“先生”はここに帰ってきてくれた。
定食屋、“朝1番”の娘ではなく、大人になった私がいるこの場所に帰ってきてくれた。
その事実が嬉しいと思えた。
意識が深い所に沈んでいた時、“何か”の音で無理矢理浮上させられた。
回らない頭でその音を聞き、それが2階部分のブザーの音だと分かった。
遮光カーテンではないカーテンからは、すっかり明るい朝の光りが入ってきている。
時計を確認すると・・・
「は・・・?5時半・・・?」
それには驚きながら連打されているブザーの音には苦笑いになる。
枕元にあるスマホを確認すると、昨日私の連絡先を交換した先生から5時過ぎに着信とメッセージが1件ずつ入っていた。
《5時半に行くからな!!》
メッセージにはそう入っていて、“朝1番”のお店はなくなっているのに当時の時間とそう変わらない時間にこの家に来た先生には苦笑いになる。
Tシャツとハーフパンツで寝ていた自分の姿を見下ろし、着替えたい気持ちにもなるけれど・・・
あまりにも連打されているブザーの音を聞き、仕方がないのでこの姿のまま2階の玄関へと向かった。
そして、扉を開けると・・・
「千寿子、良かった・・・!!
何かあったのかと思ったからな!?」
「何かありましたよ・・・。
早朝に叩き起こされましたよ・・・。」
「高校の頃は朝4時には起きてただろ!!」
「お店が朝4時からだったので起きますよ。
でも今は9時までに出社すればいいので、7時半に起きてますから。」
「7時半!?遅すぎだろ!!
早寝早起きをするんだよ!!
どうせ遅くまで起きてたんだろ!?」
「夜は12時頃には寝てますよ。」
「・・・まあ、俺も忙しくてそのくらいだけどな。」
髪型は整えてありスーツを着て髭は伸びていない先生。
朝1番に、“朝1番”だった場所に完璧な姿で現れた先生を2階の玄関から入れ、そこから1階に降りられる階段で下に下りた。
「そういえば、先生は今どこに住んでるんですか?」
「ここから駅の方に歩いて5分くらいのマンション。」
昔は毎朝座っていたカウンターの席に先生が座ると、その椅子からはギィ──...という音が鳴った。
昔もよく聞いていたその音を聞き、嬉しくなりながら完璧な姿の先生をカウンター越しから見る。
「お帰りなさい、“先生”。」
“朝人”の顔ではないこの人に、“お帰りなさい”と伝える。
先生は嬉しそうな顔で、でも少しだけ照れたような顔で。
「ただいま、千寿子。」
そう言ってくれた。
“朝人”が帰ってくることはなかったけれど、“先生”はここに帰ってきてくれた。
定食屋、“朝1番”の娘ではなく、大人になった私がいるこの場所に帰ってきてくれた。
その事実が嬉しいと思えた。
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