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その日の夕方




「福富さん、松戸先生帰るところだよ?」



朝人の訪問が終わったことを羽鳥さんがわざわざ私に伝えてきた。
それには少しだけ首を傾げながらも、隣のデスクに座る佐伯さんをチラッと確認する。



付き合ってもいないのに朝人とエッチをしまくっていたらしい佐伯さんは、何でもない顔で私が入力をした給与計算のダブルチェックをしている。
めちゃくちゃ集中している佐伯さんの美人で可愛い横顔をいつもよりも長めに見ていたら・・・



「挨拶くらいしてくれば?」



佐伯さんからそんなことを言われ・・・



何故か驚くくらい機嫌良く笑いながら、私のことを見てきた。



「福富さん今何やってるの?」



私のことを“福富さん”と呼んできて、それにも驚き固まっていると、佐伯さんがそれはもう可愛すぎる笑顔で笑い掛けてきた。



そんな初めての笑顔を見て、分かった。



「いつも他の人に見せる笑顔って外面の笑顔だったんだ?」



「大人なんだから外面くらい普通でしょ?
福富さんくらいじゃないの?
言いたいことを言って、思ったままの気持ちを顔に出せてるのは。」



「そんなことないよ、私だって泣くのを我慢してたりするし。」



「この前は泣かせちゃったよね、ごめんね。」



佐伯さんから“ごめんね”と言われ、それにも驚くしかない。



「どうしたの?凄く機嫌良いじゃん。」



「色々と勘違いしてたのが分かって。
福富さんって松戸先生のことが今でも好きなんだね。」



「・・・なんで?」



「そんなに怒った顔しないでよ。
ごめんね、色々と勘違いしてた。
私、松戸先生とエッチしまくってないから。」



その言葉には更に驚き、佐伯さんの物凄く可愛い笑顔から目を離せない。



「私の具合が悪くなった時に関西にある病院に付き添ってくれたけど、本当にそれだけ。
その時に松戸先生と松戸先生のお母様と3人でランチはしたけど、帰りも別々だったから。」



「でも・・・でも、朝人は・・・松戸先生は佐伯さんのことが凄くタイプだよ・・・。
だって、松戸先生・・・あの時・・・」



「ちょっと、大丈夫?
そんなに様子がおかしくなってる所初めて見た。
この前の泣いた時よりもおかいしよ?」



「だって・・・あの時・・・」





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