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「松戸です。よろしくお願いします。」



「福富です。よろしくお願い致します。」



爽やかに挨拶をしてくる先生と名刺交換をする。
心の中では凄く笑っていたけれど、それと同じくらいドキドキとしていた。



爽やかに笑う先生の顔を見上げてみたけれど、先生が私のこの姿を見てどう思っているのかまでは全然分からなかった。



爽やかに笑い続ける先生が面白そうに笑いながら私から視線を佐伯さんの方に移した。
すぐに私から視線を移されてしまい、それには先生からもらった名刺をキュッと胸の前で抱き締めながら小さく笑った。



やっぱり佐伯さんのことを見るよな、と思いながら。
それはそうだよな、と思いながら。



そう自分に言い聞かせながら。



そんなことを思っていたら、先生が私の頭を片手でワシャワシャと撫でてきて・・・。



「僕、福富さんが高校生の時から知り合いでして。
昨日の夜も今日の朝も福富さんの実家の定食屋だった場所で会っていましたけど、確かに福富さんの10年後みたいな方ですね。」



そう言って爽やかに笑いながらも面白そうな顔をしている。
先生は名刺入れからまた名刺を取り出し佐伯さんに向けると、佐伯さんは朝よりも上機嫌になりながら先生に名刺を差し出した。



「佐伯と申します。
福富さんは私の小学生くらいの時の見た目ですね。
小柄で幼い見た目ですけど元気があって健康そうな女の子なので社内では人気者ですよ。
ね、羽鳥さん。」



急に私のことを褒め始めた佐伯さんには驚くしかない。
先生からグシャグシャにされた髪の毛の隙間から佐伯さんを驚きながら見ていると、佐伯さんがクスクスと可愛く笑いながら私の髪の毛を綺麗にネイルされた指先で直してくれた。



「はい、福富は仕事も人間関係もテキパキとこなすので既に戦力になっていますね。
対して佐伯は仕事も人間関係も丁寧にこなすタイプで、良いコンビとして大切に育てるつもりでいます。
松戸先生や松戸会計事務所の方からも今後お世話になることになりますので、どうぞよろしくお願い致します。」



羽鳥さんが先生に深くお辞儀をすると、先生は優しい笑顔で笑いながら返事をし、佐伯さんからの名刺を受け取り自分の名刺を佐伯さんに渡していた。



そして優しい笑顔のまま佐伯さんの名刺をチラッと見下ろしていて。
それから少しだけ固まり、でもすぐにまた佐伯さんの方を向いた。



そして・・・



「松戸です。松戸朝人と申します。」



先生が佐伯さんにフルネームを伝えた。
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