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千寿子side......



翌朝



スーツに鞄、ヒールの靴を履いて2階の玄関に立った。
それからハーフアップにして可愛いヘアアクセサリーをつけた自分の髪の毛を指先で少しだけ確認する。



それを確認してから扉を開け、まだ薄暗い世界へと勢い良く飛び出した。



時間は朝の5時。
朝1番に私はこの世界を走って目指した。



やっぱり私の福と富と寿がある場所へと。



私にとっての福と富と寿である人の元へと。



「お前・・・っマジで何なんだよ・・・!?」



玄関の扉を開け、ボサボサの髪の毛とスウェット姿、黒縁眼鏡を掛けて髭が伸びている朝人が朝から爆笑している。
こんなに早朝から爆笑しているのは初めて見るくらいに爆笑している。



そんな朝人に釣られて私も爆笑をする。
本当はもっと可愛く登場するつもりだったのにこんなに爆笑されたら私も笑ってしまう。



爆笑しながらも手に持っていたビニール袋を持ち上げた。



「朝ご飯作りに来たよ!!」



私の言葉に朝人は爆笑していた笑い声を止めた。
でも、一瞬だけ。
またすぐに爆笑し始めた。



「他の男の家で朝飯作る練習として、遂には俺の部屋まで使うのかよ!!」



私が“朝1番”で朝人にご飯を作らない宣言をしたけれど、昨日私は朝人に告白もしてエッチをしたいとまで伝えていた。
それなのに私が朝人の部屋にまで来て朝ご飯を作るのにこんな理由だと思われている。



昨日あんな風に朝人に当たり散らしてから別れたから、私が朝人のことを好きでいるのを止めると思われているらしい。



「私の気持ちも頭も舐めないでくれる?」



一切笑わずに力強く朝人のことを見上げた。



「私が高校生の頃から朝人は私にとっての福と富と寿だった。
私が社会人になってから再会した後も先生は私にとっての福と富と寿で。」



朝人が私のことを真剣な顔で見下ろしたのを確認し、教えてあげる。



「金曜日にやっとボサボサ頭でスウェット、黒縁眼鏡で髭が伸びた朝人とも再会して、そしたらやっぱり私の福と富と寿は朝人だった!!
私、朝人のことが大好き!!
悪いところしかないけど、私は朝人のことが大好きなんだもん!!」



そうストレートに伝えたら朝人の瞳が揺れた。 
かと思ったら、私の顔からパッと顔を逸らしてしまった。



「そんなこと言われたら断れねーじゃん。
お前ズル賢い女になったな。」



「私、頭も強いんでしょ?
朝人が言ってくれてたじゃん!」



私に背中を向けて歩き始めた朝人の背中を追って、朝人の部屋の中へと入っていく。
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