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数時間後
ホテルのエレベーターの中、今日までの彼女が急に俺の腕に腕を絡ませてきた。
そんなことは今まで1度もされたことがないので少し驚きながらも、咄嗟に振りほどきたくなる気持ちになったことをグッと抑え込んで我慢をした。
予約していた店の階につき今日までの彼女とエレベーターを降りると、いた。
まさかの千寿子がこんな所にいた。
店のエプロンにラフなシャツとジーパン、スニーカー姿ではなく制服を着ていた。
初めて見る千寿子の制服姿を見て、俺は高校生の女の子と同レベルのガキだったんだなと改めて気付きながら、今日までの彼女が絡ませている腕に少しだけ触れた。
「ごめん、知り合いの女の子がいるからちょっといいかな?」
今日までの彼女は少し固まりながらも俺の腕を離し、それを確認してから俺は少しだけ走りながら千寿子に近寄った。
「千寿子!!」
千寿子を呼ぶと千寿子は立ち止まり、ゆっくりと俺に振り向いてきた。
それを見ながら俺は走るのを止め千寿子の前までゆっくりと歩いた。
「卒業おめでとう。
まさかそれを言えるとは思わなかったよ。
ここでお父さんとお母さんとお祝いかな?」
千寿子もここで俺と会えるとは思わなかったからか凄く驚いた顔をしている。
何かを言おうと口を開いた千寿子の顔を見下ろしながら、心残りだった“卒業おめでとう”を言えて良かったとも思った。
そして初めての千寿子の制服姿を見て、やっぱり“餞別”は貰わなくて良かったと心から安心した。
千寿子は中身だけでなく実年齢もこんなに子どもだったと改めて思ったから。
どんなに気持ちも頭も強くても、千寿子はこんなにも子どもだった。
そんなことを思いながらも千寿子が何を言うのか待っていると、千寿子を見下ろす俺の視界に入るように今日までの彼女が俺を覗き込んできた。
「先生、この可愛い女子高生はどなたですか?」
そう聞かれ今日までの彼女の存在をやっと思い出し、綺麗に終わりにさせなければいけないここでの最後の仕事が残っていることを思い出した。
「近所の定食屋のお嬢さんなんだよね。」
「定食屋・・・?
先生、定食屋さんでお食事もされるんですか?」
「それくらいするよ。」
「定食屋さんでお食事するなら私がご飯作ったのに~。」
「俺彼女には料理はさせない主義なんだよね。
仕事もしてて大変だろうし。」
今日までの彼女にそう言って、千寿子の方を見た。
俺に彼女がいると何度言っても何故か全く信じてくれなかった千寿子に。
俺はそのくらい千寿子の前ではガキだったのだろう。
「俺の彼女。
同じ職場で働いてるんだよね。」
「今日までの彼女ですけどね・・・。
北海道に一緒に行くことも待ってることもさせてくれない酷い彼氏でしたよ。」
「ごめんね、向こうに行ったら忙しすぎて今以上に構ってあげられないだろうし、いつ戻ってこられるかも分からないからさ。」
「朝も一緒に迎えたこともないし、よく考えたら本当に酷い彼氏でした~。
今日はここでのお食事の他に何かプレゼントも買ってくださいね~?」
こんなことはこの彼女から初めて言われたので、最後の最後に結構可愛いことを言うなと思いながらも聞いた。
「分かったよ、何欲しいの?」
そしたら・・・
「婚約指輪!」
その答えは結構面白かった。
でも・・・
「今のは結構面白かったけどそれ以外で。」
「やっぱり酷~い!」
笑いながらも俺のことを“酷い”と言ってきて、確かに酷い彼氏だなと自分でも素直に納得した。
「西城さんこそ酷い彼女だよね。
婚約指輪が欲しかったなら北海道の話が出る前に言ってくれてれば良かったのに。」
「全然言わせてくれない先生が酷いんですよ~!」
「まあ、そうだろうね。
俺が全面的に酷い彼氏だったよね。」
初めて本心を少しだけだけどお互いに見せていた時・・・
「千寿子?・・・あ、松戸さん!!?」
千寿子のお父さんがスーツ姿で近付いてきて、俺のことを見て驚いた顔をしている。
「ちゃんとしたらここまで格好良くなったんだね!!
あの格好でも充分格好良かったけどさ!!
凄いね!!芸能人みたいだね!!
・・・あ、彼女さん?彼女さんも凄い可愛いね!!!
・・・あ、千寿子そろそろ料理が出てくるから戻るよ!!!」
千寿子のお父さんが勢い良く話していき、それに千寿子は何も言うことなくお父さんの後ろを歩き出した。
俺は少し慌てながら千寿子の横に並び千寿子の耳元で小声で聞いた。
「体調悪い?大丈夫か?」
よく考えたらトイレから出てきた千寿子、その千寿子の顔色が結構悪かった。
高校時代の約3年間、カヤの看病を毎週のようにしていた。
あまりにも酷い体調の時はカヤも素直に“辛い”と言っていたけれど、たまに“大丈夫”と言っていて。
でも結局は何も“大丈夫”ではなくなるので、俺はカヤの顔色をよく観察するようになっていた。
カヤ以外の顔色の悪さに気付いたのはこれが初めてなくらい、いつも元気で明るい千寿子の顔、今は確かに顔色が悪い。
なのに・・・
「大丈夫です。」
ガキのくせに外面を気にしたような返事をしてきた。
それにはまた声を出そうとした時・・・
「先生。」
今日までの彼女に呼ばれた。
「可愛いお顔の女の子でしたけどまだ小さな子ですし、そんな女の子まで虜にしちゃダメですよ!」
「それは全然ないよ。
“オジサン”って呼ばれてるくらいだしね。」
顔色の悪い千寿子のことを心配しながらも今日までの彼女と俺達もフランス料理屋に入った。
ホテルのエレベーターの中、今日までの彼女が急に俺の腕に腕を絡ませてきた。
そんなことは今まで1度もされたことがないので少し驚きながらも、咄嗟に振りほどきたくなる気持ちになったことをグッと抑え込んで我慢をした。
予約していた店の階につき今日までの彼女とエレベーターを降りると、いた。
まさかの千寿子がこんな所にいた。
店のエプロンにラフなシャツとジーパン、スニーカー姿ではなく制服を着ていた。
初めて見る千寿子の制服姿を見て、俺は高校生の女の子と同レベルのガキだったんだなと改めて気付きながら、今日までの彼女が絡ませている腕に少しだけ触れた。
「ごめん、知り合いの女の子がいるからちょっといいかな?」
今日までの彼女は少し固まりながらも俺の腕を離し、それを確認してから俺は少しだけ走りながら千寿子に近寄った。
「千寿子!!」
千寿子を呼ぶと千寿子は立ち止まり、ゆっくりと俺に振り向いてきた。
それを見ながら俺は走るのを止め千寿子の前までゆっくりと歩いた。
「卒業おめでとう。
まさかそれを言えるとは思わなかったよ。
ここでお父さんとお母さんとお祝いかな?」
千寿子もここで俺と会えるとは思わなかったからか凄く驚いた顔をしている。
何かを言おうと口を開いた千寿子の顔を見下ろしながら、心残りだった“卒業おめでとう”を言えて良かったとも思った。
そして初めての千寿子の制服姿を見て、やっぱり“餞別”は貰わなくて良かったと心から安心した。
千寿子は中身だけでなく実年齢もこんなに子どもだったと改めて思ったから。
どんなに気持ちも頭も強くても、千寿子はこんなにも子どもだった。
そんなことを思いながらも千寿子が何を言うのか待っていると、千寿子を見下ろす俺の視界に入るように今日までの彼女が俺を覗き込んできた。
「先生、この可愛い女子高生はどなたですか?」
そう聞かれ今日までの彼女の存在をやっと思い出し、綺麗に終わりにさせなければいけないここでの最後の仕事が残っていることを思い出した。
「近所の定食屋のお嬢さんなんだよね。」
「定食屋・・・?
先生、定食屋さんでお食事もされるんですか?」
「それくらいするよ。」
「定食屋さんでお食事するなら私がご飯作ったのに~。」
「俺彼女には料理はさせない主義なんだよね。
仕事もしてて大変だろうし。」
今日までの彼女にそう言って、千寿子の方を見た。
俺に彼女がいると何度言っても何故か全く信じてくれなかった千寿子に。
俺はそのくらい千寿子の前ではガキだったのだろう。
「俺の彼女。
同じ職場で働いてるんだよね。」
「今日までの彼女ですけどね・・・。
北海道に一緒に行くことも待ってることもさせてくれない酷い彼氏でしたよ。」
「ごめんね、向こうに行ったら忙しすぎて今以上に構ってあげられないだろうし、いつ戻ってこられるかも分からないからさ。」
「朝も一緒に迎えたこともないし、よく考えたら本当に酷い彼氏でした~。
今日はここでのお食事の他に何かプレゼントも買ってくださいね~?」
こんなことはこの彼女から初めて言われたので、最後の最後に結構可愛いことを言うなと思いながらも聞いた。
「分かったよ、何欲しいの?」
そしたら・・・
「婚約指輪!」
その答えは結構面白かった。
でも・・・
「今のは結構面白かったけどそれ以外で。」
「やっぱり酷~い!」
笑いながらも俺のことを“酷い”と言ってきて、確かに酷い彼氏だなと自分でも素直に納得した。
「西城さんこそ酷い彼女だよね。
婚約指輪が欲しかったなら北海道の話が出る前に言ってくれてれば良かったのに。」
「全然言わせてくれない先生が酷いんですよ~!」
「まあ、そうだろうね。
俺が全面的に酷い彼氏だったよね。」
初めて本心を少しだけだけどお互いに見せていた時・・・
「千寿子?・・・あ、松戸さん!!?」
千寿子のお父さんがスーツ姿で近付いてきて、俺のことを見て驚いた顔をしている。
「ちゃんとしたらここまで格好良くなったんだね!!
あの格好でも充分格好良かったけどさ!!
凄いね!!芸能人みたいだね!!
・・・あ、彼女さん?彼女さんも凄い可愛いね!!!
・・・あ、千寿子そろそろ料理が出てくるから戻るよ!!!」
千寿子のお父さんが勢い良く話していき、それに千寿子は何も言うことなくお父さんの後ろを歩き出した。
俺は少し慌てながら千寿子の横に並び千寿子の耳元で小声で聞いた。
「体調悪い?大丈夫か?」
よく考えたらトイレから出てきた千寿子、その千寿子の顔色が結構悪かった。
高校時代の約3年間、カヤの看病を毎週のようにしていた。
あまりにも酷い体調の時はカヤも素直に“辛い”と言っていたけれど、たまに“大丈夫”と言っていて。
でも結局は何も“大丈夫”ではなくなるので、俺はカヤの顔色をよく観察するようになっていた。
カヤ以外の顔色の悪さに気付いたのはこれが初めてなくらい、いつも元気で明るい千寿子の顔、今は確かに顔色が悪い。
なのに・・・
「大丈夫です。」
ガキのくせに外面を気にしたような返事をしてきた。
それにはまた声を出そうとした時・・・
「先生。」
今日までの彼女に呼ばれた。
「可愛いお顔の女の子でしたけどまだ小さな子ですし、そんな女の子まで虜にしちゃダメですよ!」
「それは全然ないよ。
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