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「バサマ!朝人と行ってくる!!」



今日も玄関で靴を履いたジサマが台所にいるバサマに叫んだ。
ジサマの声でバサマがパタパタと走ってきて、ジサマと俺のことを優しい優しい笑顔で見てくる。



「今日も朝1番に会いに行ってくる!!」



俺がそう言うとバサマが大きく頷いた。



そして・・・



「行ってらっしゃい、朝人。」



バサマが力強く言ってくれる。
この時のバサマの顔が凄く好きだった。
歳の割に可愛い顔をしているし、俺に深い愛情を向けてくれている顔に見えていた。



ジサマが引戸を開けるとバサマの顔が朝1番の太陽の光りで輝く。
眩しくて目を瞑ってしまいそうになるくらいに輝く。



俺の思う“朝1番”はいつもこれだった。
福とか富とか寿とかはよく分からないけど、ジサマと朝1番に出掛ける為にこの引戸を開ける。
その時に見るバサマの顔が俺にとっての“朝1番”だった。



今日もそう思いながらジサマと歩き出す。



「朝人、今日は何しに行くか!!」



「ザリガニ釣りに行く!!」



「ザリガニだ~!?
ここ3日間毎日ザリガニだろ!!
今日はその公園でやってる太極拳しにいくぞ!!
そこに来てる女の子で良い身体してる女の子がいるんだよ!!」



「・・・帰ったらバサマに言おう。」



「そういんじゃねーよ!!
若い時のバサマの身体に似てるだけだよ!!」



「ジサマって良いじいちゃんなのは分かるけど、バサマは何でジサマを選んだんだよ?」



「バサマからは嫌われてたけど俺から口説きまくっただけだよ。」



「バサマに嫌われてんじゃん!!」



「ほら、俺ってすげーモテたし!!」



「ジサマって外面良いもんな。」



「見た目も良いし外面も良かったらモテるだろ!!
神社の宮司でもあったから外面は気を付けるようにしてたんだよ、“神様”がこんな中身だとビビらせるだろ!?
でもバサマとは幼馴染みだったし俺の本当の中身は知ってて。
だから嫌われまくってた!!」



「ダメじゃん!!」



「あいつがポッと出てきただけの変な男と良い感じなのを見て、それからは必死に口説きまくって無事にめでたしめでたし。」



「バサマにとってはちゃんとめでたしなのかよ!?」



俺の言葉にジサマは珍しく黙った。



「どうなんだろうな・・・。
でも、俺はバサマのどんな姿も知ってるし、バサマがどんな姿になったとしても愛し抜く覚悟は出来てる。」



そう言ったジサマの目は怖いくらい朝の光りで輝いていた。



「よし、ということで太極拳行くぞ!!」



「ザリガニだろ!!」



「いつまで経ってもガキだな、可哀想な奴!!」



「小学1年はガキだろ!!」



「中身の話だよ!!中身!!」



「小学1年なんて中身もガキだろ!?」



「俺なんてもっとガキの頃から女の胸とか興味あったぞ!?
それに“ガキ”っていうのは自分の気持ちを煩いくらいに表現出来る奴のことだよ!!
ザリガニなんて選択を表現して可愛い女の子の身体を見るキッカケを失う可哀想なガキってこと!!」



今日もジサマとこんなやり取りをしながら朝5時半の街を歩いた。
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