上 下
65 / 202
5

5-2

しおりを挟む
翌朝



「朝人!起きろ!!!」



ジサマが俺の掛け布団を剥ぎ取り叩き起こしてくる。
布団の近くに置かれた目覚まし時計を見ると5時だった。
保育園の頃は6時に起きていたのに小学校に入ってからジサマは俺のことを5時に起こすようになった。



「まだ眠い・・・。」



「昨日遅くまで起きてたんだろ!?」



「起きてない・・・9時には寝た・・・。」



「ガキなんだから7時には寝ろ!!」



「それは早すぎだろ・・・。」



「早くねーよ!!!
朝1番に行かなきゃいけねーんだから毎朝5時には起きるようにしておけ!!
朝1番を好きになれ、朝!!!!」



ジサマがそう言って強引に俺の腕を引いて起こしてきた。



「朝1番には福と富と寿がいる!!
福と富と寿に会う為に朝1番を好きになれ!!
明日も朝1番に行く、福と富と寿に会う為に!!」



ジサマが毎朝毎朝言うことを今日も俺に言ってくる。



眠くて回らない頭をほんの少しだけ回しながら言った。



「“明日”じゃなくて“今日”じゃねーの・・・?」



「“明日”なんだよ!!
何でか分かんねーけど“明日”なんだよ!!」



ジサマがよく分からないことを言って、今日も俺のことを叩き起こしてくる。
朝1番に福と富と寿に会う為に。



のそのそと起き上がりジサマに腕を引かれながらリビングへと歩いた。
ちゃぶ台にはバサマが作ってくれた朝飯が今日も並んでいる。



「何時に起きてるんだよ・・・。
バサマのことをもっと寝かせろよ・・・。」



「老人は早寝早起きだから朝人は気にしなくていいの。
それに朝人の為でもあるから。
朝が1番大切。
その日1日がどんな日になるのかが朝の過ごし方で決まる。
バサマの朝ご飯をしっかり食べてパワーをつけてね。」



「うん・・・いただきます・・・。」



両手を合わせてから箸を持ち、それからバサマが作ってくれた味噌汁を一口だけ飲んだ。



「・・・うっっっま!!!!」



バサマが作るご飯を食べると毎朝目が覚める。
旨すぎて目が覚める感覚だった。
特に手の込んでいないような料理、ほんの少しだけ味付けがされているだけ。



「バサマの料理を食ってると給食が食えねーから!!
無理して食ってるけどさ~!!」



「ジサマには長生きしてもらわないといけないからね。
朝人が大きくなって幸せになるまで、ジサマの残りの人生を出来るだけ長くしないと。」



バサマの言葉にジサマが大きく笑い、隣に座る俺の頭を両手でワシャワシャと撫でてきた。



「お前もだぞ!朝人!!
早寝早起きをして飯もしっかり食べて運動もちゃんとする!!
そうやって強い身体、長生き出来る身体を作れ!!
酒もタバコも絶対に禁止!!
不摂生なことはしねーで長生きをする!!
苦手な朝も克服して少しでもしっかりとした身体と頭のまま長生きをする!!」



「毎日聞いてるって。」



「毎日でも言うからな!!
朝人が好きな女と1日でも長く一緒にいられるように長生きしろよ!!」



「好きな女の子なんて特にいないしな~。」



「お前は俺に似て彼女を切らさない男になるよ、途中までは。
彼女とはちゃんと子どもが出来ないようにしろよ!!」



「今からそんな話すんなよ。」



「するだろ!!
朝人が大人になる頃には俺はいねーんだから!!」



それを聞き、俺はどうしようもなく苦しくなった。



「あ、天国じゃねーぞ?老人ホームな?」



「・・・ビビらせるなよ!!!」



「俺は長生きするから安心しろ!!
朝人が幸せになる姿を見届けてやるから!!
その為に俺自身もガキの頃からこの生活を続けてきてる!!」



ジサマは神社の神主だった。
今でもこの家にジサマを訪ねてくる人がいる。
その人達はジサマのことを“神様”と呼んでいた。



ジサマには不思議な力がある。
それをどう説明したら良いのかは分からないけど、とにかくジサマは未来が分かるような感じで。



俺にとっては普通のジサマだけど、他の人からするとそれは普通ではないらしい。



そんなことを考えながらバサマが作ってくれた旨い飯を食っていると、ジサマから強すぎる視線を感じた。



見てみるとやっぱりこの目をしている。
強く光るこの目をして俺のことを見詰めている。



今度は何を言われるのかと思っていると・・・



「彼女じゃない女の子とは子ども作ってもいいんじゃねーか?」



「食事中に下ネタかよ!!!」



何故かガキの頃からやけに性教育というものをされていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

処理中です...