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朝人side........
「うん、旨い。」
小学校1年生になって数日、久しぶりに会ったお母さんが作ってくれたミートソースのスパゲッティを一口食べた後にそう言った。
味は濃すぎたけど“旨い”とも思った。
俺への愛情が沢山込められている旨い料理だと思えたからかもしれない。
お母さんは嬉しそうな顔で、でも申し訳ないような顔で俺に優しく笑い掛けてきた。
それからジサマとバサマの方を向いた。
「お父さん、お母さん、後で相談があって。」
お母さんが慎重に言葉を出すと、ジサマが普通に声を出した。
「行ってこい。
お前は本当の意味で神様だからな。
救える小さな命の為にその両手を使ってこい。
旦那と2人で行ってこい。」
医者であるお母さんにジサマがそう言うと、お母さんは驚いた顔をした後に小さく頷き「はい。」と返事をしていた。
それからゆっくりと俺の方を見てきた。
「朝、お父さんとお母さん、海外で仕事をすることになる。
朝もお父さんとお母さんと一緒に来る?
学校も変わるし言葉も・・・それに今以上に構ってあげられなくなるとは思う。
本当に申し訳ないけど・・・ごめんね・・・。」
そう言われ俺は言葉を出そうと口を開こうとした。
でも、言葉は何も出てこなかった。
答えは1つしかないのにその答えを俺は言えなかった。
スパゲッティを口に入れたまま噛むことも飲み込むことも出来ないでいると、バサマが俺の頭を優しく優しく撫でてきた。
「朝人、ジサマとバサマのお家に残りな?
ジサマとバサマの残りの全ての人生と愛情を朝人の為だけに使うから、朝人はここに残りな?」
バサマがそう言ってくれた後に周りを見渡した。
「バサマの実家のボロボロの家で可哀想だけどね!」
生まれた頃から俺はジサマとバサマとほぼ3人で暮らしていた。
ジサマの実家は神社の近くにある大きな平屋。
お母さんの妹の旦那さんがその神社の神主になったのと同時にジサマとバサマはバサマの実家に住むことにしたらしい。
生まれた時からこの家に住んでいるからここがボロボロだとはそんなに思わない。
「俺はジサマとバサマがいるこの家に残るよ。」
俺のことを“朝”と呼ぶお母さんに笑いながら言った。
俺を生んでくれたお父さんとお母さんはいるけれど、この2人は俺にとってのお父さんとお母さんではないと思っている。
俺のお父さんとお母さんになってしまったら病気で苦しむ子ども達の命を救えないこともある。
病院の息子として生まれたお父さんは勿論だけど、お父さん以上にお母さんが凄い人だということは知っている。
ジサマの娘であるお母さんは“神様”だった。
俺のお母さんではなく、病気で苦しむ子ども達にとっての“神様”だった。
五体満足に生んでくれたお父さんとお母さんに感謝をしながらも、俺はジサマとバサマの方を見た。
本当は“一緒に行く”と答えた方が子どもとしては正しかったのかもしれない、そう思いながら。
「子どもにとって何が正解かの判断は難しいから朝人は気にすんな。
悪いことは全部ジサマとバサマのせいにすればいいから。」
ジサマがそんなことを言って大きく笑い、俺の頭を両手でワシャワシャと撫でてきた。
「よ~し!明日も朝1番に会いに行くぞ!!」
「行く!!
朝1番には福と富と寿がいるからな!!
今日も早く寝て明日も朝1番に会いに行く!!」
ジサマと盛り上がる俺をお母さんは悲しそうに見ていたのは知っていた。
「うん、旨い。」
小学校1年生になって数日、久しぶりに会ったお母さんが作ってくれたミートソースのスパゲッティを一口食べた後にそう言った。
味は濃すぎたけど“旨い”とも思った。
俺への愛情が沢山込められている旨い料理だと思えたからかもしれない。
お母さんは嬉しそうな顔で、でも申し訳ないような顔で俺に優しく笑い掛けてきた。
それからジサマとバサマの方を向いた。
「お父さん、お母さん、後で相談があって。」
お母さんが慎重に言葉を出すと、ジサマが普通に声を出した。
「行ってこい。
お前は本当の意味で神様だからな。
救える小さな命の為にその両手を使ってこい。
旦那と2人で行ってこい。」
医者であるお母さんにジサマがそう言うと、お母さんは驚いた顔をした後に小さく頷き「はい。」と返事をしていた。
それからゆっくりと俺の方を見てきた。
「朝、お父さんとお母さん、海外で仕事をすることになる。
朝もお父さんとお母さんと一緒に来る?
学校も変わるし言葉も・・・それに今以上に構ってあげられなくなるとは思う。
本当に申し訳ないけど・・・ごめんね・・・。」
そう言われ俺は言葉を出そうと口を開こうとした。
でも、言葉は何も出てこなかった。
答えは1つしかないのにその答えを俺は言えなかった。
スパゲッティを口に入れたまま噛むことも飲み込むことも出来ないでいると、バサマが俺の頭を優しく優しく撫でてきた。
「朝人、ジサマとバサマのお家に残りな?
ジサマとバサマの残りの全ての人生と愛情を朝人の為だけに使うから、朝人はここに残りな?」
バサマがそう言ってくれた後に周りを見渡した。
「バサマの実家のボロボロの家で可哀想だけどね!」
生まれた頃から俺はジサマとバサマとほぼ3人で暮らしていた。
ジサマの実家は神社の近くにある大きな平屋。
お母さんの妹の旦那さんがその神社の神主になったのと同時にジサマとバサマはバサマの実家に住むことにしたらしい。
生まれた時からこの家に住んでいるからここがボロボロだとはそんなに思わない。
「俺はジサマとバサマがいるこの家に残るよ。」
俺のことを“朝”と呼ぶお母さんに笑いながら言った。
俺を生んでくれたお父さんとお母さんはいるけれど、この2人は俺にとってのお父さんとお母さんではないと思っている。
俺のお父さんとお母さんになってしまったら病気で苦しむ子ども達の命を救えないこともある。
病院の息子として生まれたお父さんは勿論だけど、お父さん以上にお母さんが凄い人だということは知っている。
ジサマの娘であるお母さんは“神様”だった。
俺のお母さんではなく、病気で苦しむ子ども達にとっての“神様”だった。
五体満足に生んでくれたお父さんとお母さんに感謝をしながらも、俺はジサマとバサマの方を見た。
本当は“一緒に行く”と答えた方が子どもとしては正しかったのかもしれない、そう思いながら。
「子どもにとって何が正解かの判断は難しいから朝人は気にすんな。
悪いことは全部ジサマとバサマのせいにすればいいから。」
ジサマがそんなことを言って大きく笑い、俺の頭を両手でワシャワシャと撫でてきた。
「よ~し!明日も朝1番に会いに行くぞ!!」
「行く!!
朝1番には福と富と寿がいるからな!!
今日も早く寝て明日も朝1番に会いに行く!!」
ジサマと盛り上がる俺をお母さんは悲しそうに見ていたのは知っていた。
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