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私の高校の卒業式の朝、朝人は“北海道に行ってくる”と言って朝1番を出ていった。
“朝1番に帰ってくる”と、“千寿子の飯を食いに帰ってくる”と、そう言って。
だから“行ってらっしゃい”と言った。
朝人に初めて“行ってらっしゃい”と。
朝人が安全に出掛けて無事に帰って来られるよう、朝1番に帰ってこられるよう、“行ってらっしゃい”と言った。
朝人が帰ってくる時には朝1番はなくなっているけれど、そう言った。
朝人の連絡先は知っていたからいつでも言えると思い、これから北海道へ行く朝人には朝1番がなくなることは言わないでおいた。
朝人が帰って来た時には特別に朝1番を開けてあげよう・・・。
そんなことを思いながら言わないでおいた。
そしたら、会った。
朝に“行ってらっしゃい”を言った朝人と会った。
その数時間後に会った。
その時に会ったのは“先生”だった。
ボサボサな髪の毛ではなくて、黒縁メガネではなくて、髭が生えている顔ではなくて、スウェット姿ではなくて・・・。
口が悪い朝人ではなくて・・・。
完璧な男の人、“先生”だった。
気取っていて嫌な男にも見える、“先生”だった。
朝人はいなくなってしまったのだと分かった。
北海道に行ったのではなくていなくなってしまった。
朝人は安全に出掛けることが出来なかったのだと思った。
だから朝人は無事に帰って来られないのだと思った。
そう思いながら、“先生”と呼ばれる松戸朝人という名前の男の人を眺めていた。
同じ会社で働いていると教えてくれた、凄く可愛い顔をした彼女とデートをしている“先生”の姿を。
どことなく和泉かおりに似ている顔をしている彼女と爽やかな笑顔で食事をしている“先生”の姿を。
高級ホテルのフランス料理のお店で、フランス料理を普通に食べている“先生”の姿を。
“朝人はどこに行っちゃったんだろう”
そう思いながら“先生”を眺めていた。
高校の卒業式が終わり、制服姿のままフランス料理を食べながら眺めていた。
美味しいはずのフランス料理、しっかりと味があるはずのフランス料理からは何の味もしないと思いながら。
「こんなに泣いちゃってるから1人じゃシャワー浴びられない・・・。
私はガキだから・・・朝人を見送ってから7年経つけど、私はまだまだガキだから1人じゃ浴びられない・・・。
朝人、手伝って・・・シャワー浴びるの手伝ってよ・・・朝人・・・。」
“朝1番に帰ってくる”と、“千寿子の飯を食いに帰ってくる”と、そう言って。
だから“行ってらっしゃい”と言った。
朝人に初めて“行ってらっしゃい”と。
朝人が安全に出掛けて無事に帰って来られるよう、朝1番に帰ってこられるよう、“行ってらっしゃい”と言った。
朝人が帰ってくる時には朝1番はなくなっているけれど、そう言った。
朝人の連絡先は知っていたからいつでも言えると思い、これから北海道へ行く朝人には朝1番がなくなることは言わないでおいた。
朝人が帰って来た時には特別に朝1番を開けてあげよう・・・。
そんなことを思いながら言わないでおいた。
そしたら、会った。
朝に“行ってらっしゃい”を言った朝人と会った。
その数時間後に会った。
その時に会ったのは“先生”だった。
ボサボサな髪の毛ではなくて、黒縁メガネではなくて、髭が生えている顔ではなくて、スウェット姿ではなくて・・・。
口が悪い朝人ではなくて・・・。
完璧な男の人、“先生”だった。
気取っていて嫌な男にも見える、“先生”だった。
朝人はいなくなってしまったのだと分かった。
北海道に行ったのではなくていなくなってしまった。
朝人は安全に出掛けることが出来なかったのだと思った。
だから朝人は無事に帰って来られないのだと思った。
そう思いながら、“先生”と呼ばれる松戸朝人という名前の男の人を眺めていた。
同じ会社で働いていると教えてくれた、凄く可愛い顔をした彼女とデートをしている“先生”の姿を。
どことなく和泉かおりに似ている顔をしている彼女と爽やかな笑顔で食事をしている“先生”の姿を。
高級ホテルのフランス料理のお店で、フランス料理を普通に食べている“先生”の姿を。
“朝人はどこに行っちゃったんだろう”
そう思いながら“先生”を眺めていた。
高校の卒業式が終わり、制服姿のままフランス料理を食べながら眺めていた。
美味しいはずのフランス料理、しっかりと味があるはずのフランス料理からは何の味もしないと思いながら。
「こんなに泣いちゃってるから1人じゃシャワー浴びられない・・・。
私はガキだから・・・朝人を見送ってから7年経つけど、私はまだまだガキだから1人じゃ浴びられない・・・。
朝人、手伝って・・・シャワー浴びるの手伝ってよ・・・朝人・・・。」
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