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ホッとした自分の気持ちに小さく笑いながらリビングを通りすぎ、洗面所へと向かった。
そしたら、思わず身体がビクッと大きく反応してしまった。
先生がいたから。
洗面所の中、洗面台に両手をつき、項垂れるように下を向いている先生がいたから。
スウェットのズボンだけを履き上半身は裸になっている先生を、開いている扉から眺めながら声を掛けた。
「おはようございます。
先生もシャワーですか?」
普通に声を掛けたはずなのに、先生はビクッと大きく大きく身体を動かしていた。
まるで私が先生の部屋にいることまで忘れていたかのように。
それに小さく笑っていると、先生はゆっくりと頭を上げ私の方を見てきた。
先生が・・・
先生が、私の方を見てきた・・・。
その姿を見て・・・
頭を上げ私のことを見てきた先生を見て・・・。
小さく笑っていたはずの自分の顔が酷く歪んだのが分かった。
そして、涙が大量に流れてきた。
“先生”を見て・・・。
うちの会社の顧問、公認会計士の“先生”を見て・・・。
私は大量に流れてくる涙も拭えないまま口だけを開いた。
「どこに行ってたの・・・っ?」
嗚咽を漏らしながら続ける。
「朝人(あさと)・・・っ」
“先生”の名前を呼んだ。
“先生”と再会してから初めて“先生”の名前を呼んだ。
松戸朝人という名前の先生の名前を。
朝1番が大好きなこの人にピッタリの名前を。
完璧な顔面、完璧な髪型ではないこの人の名前を。
髪の毛はボサボサで黒縁メガネを掛け、髭も伸びてきているこの人の名前を・・・。
私が知っている朝人の姿をしているこの人の名前を・・・。
高校を卒業し会えなくなってからも忘れられず、会えなくなってから好きになってしまったこの人の名前を・・・。
再会してからは完璧な“先生”の姿しか見せてくれず、老人になってしまっていたこの人の名前を・・・。
「朝人・・・っ!!!」
もう1度叫ぶように呼んだ。
そしたら、思わず身体がビクッと大きく反応してしまった。
先生がいたから。
洗面所の中、洗面台に両手をつき、項垂れるように下を向いている先生がいたから。
スウェットのズボンだけを履き上半身は裸になっている先生を、開いている扉から眺めながら声を掛けた。
「おはようございます。
先生もシャワーですか?」
普通に声を掛けたはずなのに、先生はビクッと大きく大きく身体を動かしていた。
まるで私が先生の部屋にいることまで忘れていたかのように。
それに小さく笑っていると、先生はゆっくりと頭を上げ私の方を見てきた。
先生が・・・
先生が、私の方を見てきた・・・。
その姿を見て・・・
頭を上げ私のことを見てきた先生を見て・・・。
小さく笑っていたはずの自分の顔が酷く歪んだのが分かった。
そして、涙が大量に流れてきた。
“先生”を見て・・・。
うちの会社の顧問、公認会計士の“先生”を見て・・・。
私は大量に流れてくる涙も拭えないまま口だけを開いた。
「どこに行ってたの・・・っ?」
嗚咽を漏らしながら続ける。
「朝人(あさと)・・・っ」
“先生”の名前を呼んだ。
“先生”と再会してから初めて“先生”の名前を呼んだ。
松戸朝人という名前の先生の名前を。
朝1番が大好きなこの人にピッタリの名前を。
完璧な顔面、完璧な髪型ではないこの人の名前を。
髪の毛はボサボサで黒縁メガネを掛け、髭も伸びてきているこの人の名前を・・・。
私が知っている朝人の姿をしているこの人の名前を・・・。
高校を卒業し会えなくなってからも忘れられず、会えなくなってから好きになってしまったこの人の名前を・・・。
再会してからは完璧な“先生”の姿しか見せてくれず、老人になってしまっていたこの人の名前を・・・。
「朝人・・・っ!!!」
もう1度叫ぶように呼んだ。
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