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「はい、終わり。」



何でもない声で、何でもない顔で、先生が私の身体から手を離した。
上半身全てを優しく拭いていってくれ、汗だくだった上半身はスッキリとした。



身体の表面はとてもスッキリとした。



「これ新しい着替えな。」



先生がパジャマを渡してくれ、私はそのパジャマを眺めながら“ありがとうございました”と言おうとした。



本当に言おうとした・・・。



なのに、何も声が出てこなかった。



小さな声も出てこなかった。



声の代わりに出てきたのは涙だった。



さっきの光景を焼き付けたこの目から次々に涙が流れてくる。
沢山沢山流れてくる。



涙が流れる度に目に焼き付けたさっきの光景も流れていってしまいそうで、私は慌てて両手で両目を覆った。



それでも涙が止まらなくて・・・。



「早くパジャマ着ろ。
もっとサッとやればよかった、ごめんな。」



優しい優しい先生の声がこの耳に入ってきた。
その声は今日聞いた中で1番優しい声をしていた。



「ほとんど見てねーから。
俺も忘れるからお前も忘れろ。」



そんなことを言われ、私は両手で両目を覆ったまま口を開いた。



先生のことを見ることなく・・・。



先生の顔を見ることなく・・・。



“ありがとうございました”ではなく、言った。



「下も拭いてください・・・。」
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