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先生とそんな会話をしながら用意してくれたご飯を全て食べ、持ってきてくれていた水で薬も飲んだ。
それを見届けた先生は安心した顔で小さく笑い、お盆を持って寝室を出ていった。



少しだけ開いている寝室の扉の向こう側、そこからカチャカチャという食器を洗う音が聞こえてきて、その音を聞きながら眠くなってきたようにも思う。



眠くなってきたようにも思うけど・・・



でも・・・



でも・・・



私は布団から慌てて上半身を起こし、それから立ち上がろうとした。
でも身体に力が入らなくて・・・。



それにも慌てながら叫んだ。



「先生・・・っ吐きそう・・・っ」



叫んだはずの声は思ったよりも出ていなくて、でももうこれ以上は大きな声は出せなくて。



両手で口を押さえてしまったし、大きな声どころか小さな声ももう出せないくらいで。



口を押さえながら必死に立ち上がろうとしていた時、寝室の扉が勢い良く開いた。



涙が溜まってきた目でそっちを見ると、先生が洗面器を持ってきてくれていた。
そしてそれを持ったまま私の前にしゃがんでくれ、洗面器が私の顔の下に来たのを確認し・・・



私は吐いてしまった。



先生が初めて作ってくれた料理も、買ってきてくれた桃缶も、吐いてしまった・・・。



それだけではなく・・・



「スーツ・・・ごめんなさい・・・クリーニング代・・・」



先生のスーツにまでついてしまい、苦しみながらもその言葉だけは出した。



絶対に高級なスーツだろうし、ちゃんと手入れをしているのも知っているし、なんならスーツを汚されてムカついていた所も見ている。



「そんなの気にすんな。
気持ち悪いのがなくなるまで全部出せよ。」



先生の口からそんな優しい言葉が出て来て、私の背中を優しくて擦ってくれる。
それを苦しい中でもしっかりと感じて、何の涙かもうよく分からない涙を流しながらまた吐いた。



「作りすぎたな、ごめんな。」



先生に止められていたにも関わらず全て食べた私が悪いのに、先生がそんな優しい謝罪をしてくれる。



「せっかく作ってくれたのに、ごめんなさい・・・。」



「夜もまた作るから。」



そう言って・・・



私の頭をワシャワシャと撫でてきた。



「一瞬だけ事務所に行ってくるから大人しく寝てろよ!?」



私に新しいスウェットを渡してくれたり、洗面所に連れていってくれたり、部屋の中を綺麗にしてくれた先生。
寝室の少しだけ開いている扉から「行ってくる」と声を掛けてきた先生は、やっと新しいスーツに着替えていた。



その姿はやっぱり気取っているように見えてしまうけれど、嫌な男とは思わなかった。



「うん、行って。」



短くそう答えると、先生は無言で私のことをしばらく見詰め・・・



「行ってきます。」



少しだけ苦笑いをして玄関へと歩いていった。
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