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最後のデザートまで苦しそうな顔をして食べていた先生とお洒落な夜の街を歩いていく。
腕時計を見下ろすと21時になろうとしていた。



「俺の部屋ここから15分くらいだし、寄ってく?」



「私の家はここから20分くらいですし寄りませんよ。」



このお洒落な街、でもこの通りをずっと歩いていくと住宅街に入っていく。
そこは特段お洒落というわけではなくて、向こう側に進むにつれてごく普通の住宅街になっていく。



そんな住宅街で先生は一人暮らしをしていて、私は実家で暮らしている。



「家まで送っていく。」



「先生と私はそういう関係ではないのでいらないです。」



「お前ガキだからな、知らない奴についていったら悲惨なことになりそうだから。」



「この歳にもなって知らない人なんかについていくわけないじゃないですか。」



「その歳になったからこそついていくっていうこともあるんだよ。」



「それどんな状況ですか?」



「そんな状況を想像も出来ないくらいガキだから送っていく。」



先生がバカにしたように笑い、私の実家へと続く道を歩いていく。
先生の一人暮らしの立派なマンションも通りすぎ、私が住む実家へ。



先生がずっと無言だから私も何も話さなかった。



住宅街の静かな夜の道を2人でゆっくりと歩いていく。
やけにゆっくりと感じたけれど何も言わなかった。
先生も何も言わなかったから、私も何も言わなかった。



「送ってくれてありがとうございました。
夜ご飯もご馳走様でした。」



「あんなしょぼい店であんな不味い飯にあんなに金取りやがってな!!!」



「ねぇ、本当に口悪すぎだから!!
普通にお洒落だったしご飯だって普通に美味しかったし金額だって普通だったじゃん!!」



「“普通”ってお前も言ってるだろ!!
普通レベルの飯だったとしたらあれは高過ぎだろ!!
あー・・・っっ!!美味い飯が食いたい!!」



先生が叫ぶように私の実家の前で嘆いた。
その言葉には思わず笑ってしまい、仕方がないので言ってあげる。



「うちでちょっと食べ・・・」



「食う!!!」



食い気味の返事に大きく笑いながら実家の戸を開けた。
古い建物、引き戸がつっかかりなかなか開けられない。
カタカタと揺らすように開けたらやっと開き、そこから先生を入れた。



少しだけ先生を振り返ると、物凄く嬉しそうな顔で足を踏み入れていた。
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