【完】女神達が愛した弟(カットページ掲載済2023.6.17)

☆4

4-6

「箕輪が加賀製薬を退職してから数年経ってるし、人は数年経ったら変わるだろ。」



「成長していくからね、真っ直ぐにだけでなく曲がりながらも。」



「そうだな・・・。」



「それでも、小池さんにはしっかりとした根があった。
新卒でもしっかりと根がある子だった。
あんなにしっかりした根を抜くのは容易ではない。」



箕輪さんが澄んだ瞳で弟さんを真っ直ぐと見た。
でも、澄んでいるだけではなくて・・・どこか厳かな瞳でもあって・・・。



「目に見えている物だけが全てではない。
心の中は見えないのだから。
わたしは小池さんを信じてる。
不倫とかそういう曲がり方ができる根ではなかった。」



「箕輪が言うならそうなのかもな・・・。」



「男さんと弟さんだってそう。
素晴らしい根があるから、どんなに曲がったとしてもしっかり空に向かって枝が伸びていく。」



箕輪さんがそう言いながら弟さんに優しく笑い掛けた。



「弟には弟にしか出来ないことがあるんじゃない？
弟にしか出来ないやり方も。
男さんと兄弟だけど、弟さんは男さんよりも鋭い枝。」



「・・・“雷(かみなり)”も俺の兄貴だからな。
3歳の頃から夕方以降はほぼ雷(らい)に育てて貰ってた。
夜中にトイレを失敗した時、雷を真っ先に起こすくらいに俺は雷が大好きで信頼してた。
盛大に漏らしても雷はいつも褒めてくれたんだよな、“すげー出たな！やったな！”とか言いながら。」



弟さんが幸せそうな顔で少し上を向き・・・それから、わたしの方を見た。



「星神、海神に連絡してもらえるか？
あいつと話したい。」



その目には熱くて激しい光りのような物が見えた・・・。



“いつか”と思っていたけれど、まさかの・・・すぐに海神ちゃんと弟さんが会う展開になってしまった・・・。