【完】犬、おあずけを食う

Bu-cha

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「俺、真琴のことすげー好き。」



「私も正志のこと好き~。」



真琴が可愛い顔で笑いながら、俺の胸に身体を預けてきた。
他の奴が見たらきっと冷めている表情に見えるだろうけど、俺には可愛い表情にしか見えなかった。



真琴も昔から努力していた。
宝多米店で扱う米や純米酒、それをもっと沢山の人に知って貰い、商店街に人をいっぱい呼び込む、そう言って努力をしていた。
だから表情を隠していた。
真琴の本当の表情は結構激しい表情だったから。



“お兄ちゃんは、この店を継がないような気がする。”



幼稚園の頃から何故かそんなことをよく言っていた。



“きっと私が女店主になる。
だから隠さないと、この激しい性格を。
正志のお父さんから何度も言われてるから、「女店主として成功したいなら顔を読まれず相手の顔を読めるようになれ」って。”



俺と全く同じことを真琴にも言っていた父さん。
そして、真琴の兄である駿兄にはもっと色々と教え込んでいる。
酒のことや酒屋の営み、商店街のことだけではなく、もっと大きなことを。
もっと大きく、広く、深く、なのに高く、そこまで登り詰める為に必要な力を、教え込んでいる。
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