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朝ご飯を3人で食べ、剛士君はシャワーを3分どころか1分くらいで出て来た。
私が部屋着から出勤着に着替えていると、すぐにスーツを着た剛士君がまたベッドに横になっている。
明らかに眠そうで、そんな顔は初めて見たので笑いながら瞬きをした。
「すげー眠い・・・。
こんなに眠いのは記憶にある限り初めて・・・。
今まで眠れてなかった分がまとめて来たくらいに、眠い。」
「今日結構面接入ってるよね?」
「入ってる・・・。すっげー眠い・・・。
常に気張って生きてきてたから、こんなに眠くて面接で人を見られるか心配になってきた。
完全に仕事の“気”が抜けてる・・・。」
確かに初めて見るくらいの“気”の抜けた顔と身体で・・・。
瞬きをしながらも少し考えた。
「アイスコーヒーあるけど少し飲む?
朝に多めに作ったのがあるよ。」
着替えながら剛士君に聞くと、剛士君は何か考えた顔で私を見詰めてきた。
そして・・・
「薬・・・」
「薬?なんの?」
「薬入れて、珈琲に。」
剛士君にそんなことを言われ、瞬きをしながら見詰め返す。
「姉貴は酒に薬を入れてたらしい。
姉貴もクラブでNo.1のホステスだったんだよ。
話しか聞いたことねーけど、元気のない疲れた経営者にはよく酒に薬を入れて元気にしてたらしい。」
「・・・なんの薬なんだろう?
市販薬くらいしか家にないけど・・・。」
私が聞くと剛士君は寝転がったまま私を見て・・・
「“気”を込めるんだよ、自分の“気”を。
瞳はあのカフェにいた時にそれが出来てたんだと思う。
会社の珈琲店にいる時よりも遥かに可愛く見えてた。」
「そうなの・・・?」
剛士君は“気”が抜けた顔で寝転がりながら小さく頷いた。
そんな剛士君を瞬きをしながら見て・・・キッチンに向かった。
前は小さなグラスに少しだけだったけど、今日は普通のグラスに氷を入れ・・・アイスコーヒーを注いだ。
それと・・・。
それを持って私の部屋へ・・・。
どうやって薬を入れるのか・・・“気”を込めるのかよく分からなかったけど・・・。
あのカフェで働いていた写真は沢山あって・・・。
私は覚えている。
私は鮮明に覚えている。
私は覚えているし・・・
私は思い出せるし・・・
私は・・・
私は・・・
タイムマシーンに乗れる・・・。
それは過去へだけでなく、きっと未来へも・・・。
未来へも行けていた・・・。
私の部屋に入り、ベッドに寝転がっている剛士君の足元の方に座った。
そんな私を眠そうな剛士君が見て・・・ゆっくりと起き上がった。
“気”が抜けた剛士君を瞬きを繰り返しながら見て、言う・・・。
込める・・・。
この両手に持つ飲み物に、“気”を込めながら・・・。
「今日の面接は午前中に4件、午後は9件、定時後も3件あるようですけど、アイスコーヒーに眠くならない薬を入れておきました。」
「ん・・・。」
剛士君が小さくそう言って、アイスコーヒーを受け取り一気に飲んだ。
飲み終わった剛士君を瞬きをしながら見る。
よく冷えたアイスコーヒーに眠気が消え去ったのか、スッキリした顔をしている。
そして、もう片方の手に持っていたグラスを差し出す。
「サービスの牛乳です!!
少なめにしてあります!!」
剛士君が嬉しそうな顔で小さなグラスに入った牛乳を受け取った。
「見付けてください、また。
あの大きな会社の新鮮な血となる人を、また見付けてください。」
少しの牛乳も一気に飲んだ剛士君が、飲み終わりまたすぐに私を見た・・・。
だから、言った・・・。
「剛士君。」
“剛士”君の名前を、呼んだ・・・。
剛士君の瞳は・・・
昨日までの怖いくらいな力強さだけではなく・・・
そこに穏やかな優しさも込められていた・・・。
「見付けてくる。
俺もかくれんぼしてる奴を見付けるのが得意だからな。」
そう言って満足そうな顔で笑う剛士君の上唇の上・・・そこに少しついた牛乳を私は瞬きをしながら指先で拭った。
私が部屋着から出勤着に着替えていると、すぐにスーツを着た剛士君がまたベッドに横になっている。
明らかに眠そうで、そんな顔は初めて見たので笑いながら瞬きをした。
「すげー眠い・・・。
こんなに眠いのは記憶にある限り初めて・・・。
今まで眠れてなかった分がまとめて来たくらいに、眠い。」
「今日結構面接入ってるよね?」
「入ってる・・・。すっげー眠い・・・。
常に気張って生きてきてたから、こんなに眠くて面接で人を見られるか心配になってきた。
完全に仕事の“気”が抜けてる・・・。」
確かに初めて見るくらいの“気”の抜けた顔と身体で・・・。
瞬きをしながらも少し考えた。
「アイスコーヒーあるけど少し飲む?
朝に多めに作ったのがあるよ。」
着替えながら剛士君に聞くと、剛士君は何か考えた顔で私を見詰めてきた。
そして・・・
「薬・・・」
「薬?なんの?」
「薬入れて、珈琲に。」
剛士君にそんなことを言われ、瞬きをしながら見詰め返す。
「姉貴は酒に薬を入れてたらしい。
姉貴もクラブでNo.1のホステスだったんだよ。
話しか聞いたことねーけど、元気のない疲れた経営者にはよく酒に薬を入れて元気にしてたらしい。」
「・・・なんの薬なんだろう?
市販薬くらいしか家にないけど・・・。」
私が聞くと剛士君は寝転がったまま私を見て・・・
「“気”を込めるんだよ、自分の“気”を。
瞳はあのカフェにいた時にそれが出来てたんだと思う。
会社の珈琲店にいる時よりも遥かに可愛く見えてた。」
「そうなの・・・?」
剛士君は“気”が抜けた顔で寝転がりながら小さく頷いた。
そんな剛士君を瞬きをしながら見て・・・キッチンに向かった。
前は小さなグラスに少しだけだったけど、今日は普通のグラスに氷を入れ・・・アイスコーヒーを注いだ。
それと・・・。
それを持って私の部屋へ・・・。
どうやって薬を入れるのか・・・“気”を込めるのかよく分からなかったけど・・・。
あのカフェで働いていた写真は沢山あって・・・。
私は覚えている。
私は鮮明に覚えている。
私は覚えているし・・・
私は思い出せるし・・・
私は・・・
私は・・・
タイムマシーンに乗れる・・・。
それは過去へだけでなく、きっと未来へも・・・。
未来へも行けていた・・・。
私の部屋に入り、ベッドに寝転がっている剛士君の足元の方に座った。
そんな私を眠そうな剛士君が見て・・・ゆっくりと起き上がった。
“気”が抜けた剛士君を瞬きを繰り返しながら見て、言う・・・。
込める・・・。
この両手に持つ飲み物に、“気”を込めながら・・・。
「今日の面接は午前中に4件、午後は9件、定時後も3件あるようですけど、アイスコーヒーに眠くならない薬を入れておきました。」
「ん・・・。」
剛士君が小さくそう言って、アイスコーヒーを受け取り一気に飲んだ。
飲み終わった剛士君を瞬きをしながら見る。
よく冷えたアイスコーヒーに眠気が消え去ったのか、スッキリした顔をしている。
そして、もう片方の手に持っていたグラスを差し出す。
「サービスの牛乳です!!
少なめにしてあります!!」
剛士君が嬉しそうな顔で小さなグラスに入った牛乳を受け取った。
「見付けてください、また。
あの大きな会社の新鮮な血となる人を、また見付けてください。」
少しの牛乳も一気に飲んだ剛士君が、飲み終わりまたすぐに私を見た・・・。
だから、言った・・・。
「剛士君。」
“剛士”君の名前を、呼んだ・・・。
剛士君の瞳は・・・
昨日までの怖いくらいな力強さだけではなく・・・
そこに穏やかな優しさも込められていた・・・。
「見付けてくる。
俺もかくれんぼしてる奴を見付けるのが得意だからな。」
そう言って満足そうな顔で笑う剛士君の上唇の上・・・そこに少しついた牛乳を私は瞬きをしながら指先で拭った。
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