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──────────・・・・



目を覚ますと、眩しい夏の朝日・・・。
カーテンも閉めずにあのまま気が付いたら寝ていたようで・・・。
電気だけは消えていた。



隣を見ると剛士君がシングルベッドを占拠して寝相悪く寝ている。
それでも私はよく眠れていて、疲れ果てていたからよく眠れていたのだと思う・・・。
私は30歳だし・・・。



身体中が痛いような気がする中、シングルベッドを静かに出る。
時間を見ると出勤まではまだ時間がある。
部屋着を着てからリビングに出る。



昨日の夜ご飯は食べなかった剛士君のために、朝ご飯を作っていく。
勿論・・・お父さんもいるし。



ご飯を炊いてから、鮭を焼いている間に卵焼きを作り、野菜を多めに入れたお味噌汁とお新香。



それをダイニングテーブルに並べていたら、お父さんが起きてきた。
部屋着を持ってきてくれていて無言で私に渡してくれ・・・それを無言で受け取った。
恥ずかしかったので部屋着だけを見て瞬きをした。



「剛士君起きないけど時間大丈夫なの?」



「そうだよね・・・。
私、先にシャワー浴びてくるね。
剛士君起きたら先に食べてて?」



「分かった。」



お父さんの返事を聞いてお風呂場に向かい、シャワーやドライヤー・・・お化粧を済ませてからまたリビングに戻った。



リビングに入ったら・・・お父さんが1人でソファーに座ってカメラをいじっている。
時計を見たら、まだ時間は大丈夫そう。
アヤメさんのシャワーは長かったけど、剛士君のシャワーは3分くらいだから。



「お父さん、珈琲飲む?」



「あ!お願いしようかな。
瞳の珈琲はお母さんの味とソックリだから嬉しいよ。
お母さんの珈琲が1番好きなんだ。」



「私も。私が働いてたチェーン店の珈琲豆だけど、お母さんの挽き方でお母さんの淹れ方をすると、お母さんの味になるんでしょ?」



「たぶんだけどね?
こんな味だったな~ってくらいだけど。」



「私は幼稚園生だったから珈琲飲めなかったからな。
でも・・・お母さんが珈琲を作っている所は隣で何度も何度も写真を撮った。
アイスコーヒーの時もホットコーヒーの時も、何度も何度も。
だからきっと・・・お母さんの珈琲の味になってると思う。」



ソファーでカメラをいじっているお父さんが嬉しそうな顔で頷き、キッチンで珈琲豆を挽く私を見た。



そんなお父さんの姿を瞬きをしながら見る。
よくお母さんの隣に立っている時、珈琲を作っているお母さんをお父さんは嬉しそうな顔で見ていた。



その瞬間に戻りながらも、今のお父さんを写真に撮る。
お母さんが亡くなった時は死んでしまいそうなくらい苦しんでいたお父さんも・・・今は穏やかな顔で、幸せそうな顔で笑っている。



「アイスコーヒー多めに作っておくね?」



嬉しそうなお父さんの返事を聞いてから、お母さんの珈琲を作る。



作ったアイスコーヒーを氷を入れたグラスに注ぎ、お父さんと私の席に置いた。
時計を見ると、お父さんがソファーから立ち上がった。



「剛士君、起こした方がいいんじゃない?」



「そうだよね・・・。
剛士君って、なかなか眠れないみたいで。
夜寝る時もお酒を飲まないと眠れないらしくて。
少しでも長く寝かせた方がいいと思ったけど・・・起こしてくるね。」



せっかく眠れているのに可哀想だけど、私の部屋に入りシングルベッドに寝相悪く寝ている剛士君を見る。
瞬きをしてみたら、さっき撮った写真と全く同じ態勢で1ミリも動いていないくらい爆睡をしている。



筋肉がよくついている剛士君の肩に少し手を触れ小さく揺らす。



「剛士君、おはよう。」



起こしたけど・・・全然起きない。
一瞬、死んでしまったのかと怖くなったけど・・・ちゃんと背中は呼吸で上下に動いている。



もう少し強めに肩を揺らしてみて、もう少し大きな声で剛士君を呼んだ・・・。



それでも起きなくて・・・



それを何度も何度も繰り返し・・・



繰り返して、やっと剛士君が少しだけ瞼を開けた。



剛士君が少しだけ瞼を開け・・・私を見て、しばらくジッと見て・・・幸せそうな顔で笑った。



「一瞬・・・本当に一瞬、“あやめちゃん”かと思った。」



「それは・・・私きっとそんなに美人じゃないからな。」



「たぶん顔は全然似てないと思うけど、こんなに眠れたのは記憶にある限り初めてで・・・。
目を開けたら“あやめちゃん”がいたから・・・自分はまだ子どもで昔なのかと錯覚した。
そしたら瞳で・・・もっと幸せになった。
俺もタイムマシーンに乗った。」



「タイムマシーンに?」



「“あやめちゃん”が生きてる時に戻れて、またタイムマシーンに乗って・・・この瞬間になった。
毎日毎日目を覚ますのが怖かった。
大好きなかぞくがいても、俺はあまりにも気持ち悪い汚い身体で・・・目を覚ましてそれを思い出すのが怖かった。」



剛士君はそう言って幸せそうに・・・本当に幸せそうな顔で笑った。



「目が覚めた時、こんなに幸せな瞬間がある日を俺は考えたこともなかった。
死ななくてよかった・・・。
瞳、“俺”を見付けてくれてありがとう・・・。」



「うん・・・。
剛士君が私を見付けてくれたんだけどね。」



そう言いながら瞬きをした・・・。



剛士君は笑いながらも眠そうな顔で上半身を起こし、自分の身体を見下ろした。



「瞳のお父さん・・・いる?」



「リビングにいるよ?」



私の返事に頷いて、剛士君は真剣な顔で立ち上がり・・・裸のままリビングに向かってしまった。
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