【完】初めてのベッドの上で珈琲を(カットページ掲載済2023.5.13)

6

6-7

アヤメさんがそれには驚きながらお父さんを見ていて・・・



「写真を撮ろう、今の姿を。
覚悟を決めた瞬間を、写真に撮ろう。」



「写真に・・・？」



「写真はタイムマシーンなんだ。」



お父さんがいつも私に言う話をアヤメさんにもしようとする。



「タイムマシーン・・・？」



「そう、写真を見ればいつでもその瞬間に戻れる。
その時のその場所のその場面に戻ることが出来る。
その写真の中の人に会うことが出来るし、その時の出来事にも感情にも戻ることが出来る。
タイムマシーンなんだ、写真は。」



「写真は、タイムマシーン・・・。」



「でも、実際に時を戻せるわけではないから・・・。
“思い出す”だけなんだけどね。
でも、僕は“タイムマシーン”だと信じている。」 



お父さんがそう言ってアヤメさんに笑うと、アヤメさんは真剣な顔で頷いた・・・。



そして、お父さんが指差していた場所に立った・・・。



美しく立ったアヤメさんを確認してから、お父さんがカメラを通してアヤメさんを見た。
すぐにシャッターの音が鳴ると思ったらそんなことはなくて・・・。
しばらくしても音は鳴らずにお父さんはカメラを構えているだけ・・・。



それからもう1度、お父さんは肉眼でアヤメさんを見てから・・・
またカメラを通してアヤメさんを見た。



そして・・・



「傷だらけだね・・・。」



お父さんが小さな声で呟いた・・・。



それから1回だけシャッターの音が聞こえ、私もその瞬間に瞬きをした。



「瞳・・・。」



お父さんがカメラから目を離し、私を見た。



「アヤメちゃんの身体に沢山触れてあげて。
傷だらけだから、身体が。
瞳が恋人ではないのが残念だけど、それでも瞳が沢山触れてあげて。
電気は消さないで。
アヤメちゃんにその場面を見せてあげて。
自分の身体に父親以外の手が触れている所を。」