47 / 122
5
5-10
しおりを挟む
「なんだよ、手繋ぐくらいいいだろ。」
会社の最寄り駅に降りても剛士君が手を繋いだままだったので、それはお願いをして離してもらった。
「私には難易度が高すぎます・・・!」
「処女みたいな顔で処女みたいなこと言うなって!」
剛士君が大笑いしながらそう言って、私の隣を歩く。
それに顔だけでなく全身が熱くなってくるのが分かる・・・。
憧れている人と・・・
大好きな人と一緒に会社に行ける日が来るなんて思わなかったから。
剛士君を何度も見上げて瞬きを繰り返した・・・。
そんな私を剛士君は満足そうな顔で見下ろす・・・。
夏の暑い日差しの中、剛士君と一緒に会社のビルまで歩く。
あと少しでビルに着きそうな時・・・
「笠原さん?」
と、声を掛けられた。
振り返ると・・・前に働いていたカフェの店長の男性だった。
「店長!お久しぶりです!!」
「久しぶりだね~!
あ・・・彼氏?」
「えっと・・・」
店長から、隣にいる剛士君のことを“彼氏”かと聞かれた・・・。
手は繋いでいないけど、暑い中2人でくっつくように歩く姿にそう見えたのだと気付いた。
「えっと・・・私の好きな人で・・・。」
両手で顔を隠しながら答えると、その両手を剛士君に掴まれ顔が出てしまった。
剛士君も店長もニヤニヤとしながら私を見ていて・・・瞬きをする。
「こんなに格好良い彼氏が出来て良かったね!
それに藤岡ホールディングスに就職とか本当に凄いよ!!」
店長がそう言いながら目の前にある大きなビルを見上げた。
それにつられるように私も目の前の大きなビル、藤岡ホールディングスのビルを見上げる。
「長年バイトだったけど、仕事も出来たし接客も凄い出来たからね。
うちの店舗が長年1番だったのは笠原さんのお陰だよ。」
「違いますよ、“あの女性”のお陰です。」
「あの女の子がいたのをキッカケに、笠原さんもいたからだよ。
久しぶりに見たら雰囲気が少し変わったよね。
憧れのあの女の子に少し雰囲気が近付いてきたんじゃない?」
「本当ですか・・・!?」
店長がそんな嬉しいことを言ってくれ、私は嬉しくて自然と笑顔になる。
“たまには店に来てね”
店長が最後にそう言ってくれてから別れ、また剛士君とあと少しの道を歩く。
「憧れの女の人に近付いてきたって言ってもらっちゃった!」
「あの人、何も処女っぽくないだろ。」
剛士君は私の憧れの女の人に1度だけ会ったことがある。
「瞳、“憧れの女”何人いるんだよ?」
「2人だけだよ?」
「・・・その2人は似てた?」
「似てたのかな・・・。
顔とかではなくて、美しく立つ姿が。
2人とも立つ姿が凄い美しくて。」
「俺はあの人が立った所は見なかったからな。」
「強い女性には憧れる。
私は・・・強くないから。」
「瞳は強いだろ。
週末にあの写真屋で1人過ごせるくらいに、強いだろ。」
剛士君が真剣な顔で私を見詰めた・・・。
「それに、いつも1番幸せな顔でいられる写真を選べる強さもある。
そのために長年バイトでい続けるくらい、瞳は強い。」
「そうですか・・・?」
「だからこそ、勉強不足ではあったな。
勉強はどこでも出来る。
どんな場所でも環境でも、金があろうとなかろうと。
勉強をやめない限りはずっと勉強が出来る。
勉強しろ、瞳。」
「はい・・・。」
私が頷くと剛士君が優しい顔で笑った。
「瞳は極上に良い女になれるくらい、それくらい良い女だよ。」
「極上に良い女・・・」
「愛して愛して仕方ない奴がいて、権力も兼ね備えた“極上に良い女”。」
剛士君がそう言い終えた時、藤岡ホールディングスのビルに着いた。
汗が吹き出てきて私は汗をハンカチで拭く。
「こんなに巨大な体を持つ生き物と関われたからな。
愛して愛して仕方ない女が折角見付けてくれたから、あとは俺も権力も兼ね備えてみるか。」
「じゃあ、私も・・・。
愛して愛して仕方ない“人”に見付けてもらえたので、少し権力のことも意識してみます・・・。」
「俺が輸血した“度胸”どうしたんだよ!
“少し”じゃなくてもっと意識しろよ!!」
会社の最寄り駅に降りても剛士君が手を繋いだままだったので、それはお願いをして離してもらった。
「私には難易度が高すぎます・・・!」
「処女みたいな顔で処女みたいなこと言うなって!」
剛士君が大笑いしながらそう言って、私の隣を歩く。
それに顔だけでなく全身が熱くなってくるのが分かる・・・。
憧れている人と・・・
大好きな人と一緒に会社に行ける日が来るなんて思わなかったから。
剛士君を何度も見上げて瞬きを繰り返した・・・。
そんな私を剛士君は満足そうな顔で見下ろす・・・。
夏の暑い日差しの中、剛士君と一緒に会社のビルまで歩く。
あと少しでビルに着きそうな時・・・
「笠原さん?」
と、声を掛けられた。
振り返ると・・・前に働いていたカフェの店長の男性だった。
「店長!お久しぶりです!!」
「久しぶりだね~!
あ・・・彼氏?」
「えっと・・・」
店長から、隣にいる剛士君のことを“彼氏”かと聞かれた・・・。
手は繋いでいないけど、暑い中2人でくっつくように歩く姿にそう見えたのだと気付いた。
「えっと・・・私の好きな人で・・・。」
両手で顔を隠しながら答えると、その両手を剛士君に掴まれ顔が出てしまった。
剛士君も店長もニヤニヤとしながら私を見ていて・・・瞬きをする。
「こんなに格好良い彼氏が出来て良かったね!
それに藤岡ホールディングスに就職とか本当に凄いよ!!」
店長がそう言いながら目の前にある大きなビルを見上げた。
それにつられるように私も目の前の大きなビル、藤岡ホールディングスのビルを見上げる。
「長年バイトだったけど、仕事も出来たし接客も凄い出来たからね。
うちの店舗が長年1番だったのは笠原さんのお陰だよ。」
「違いますよ、“あの女性”のお陰です。」
「あの女の子がいたのをキッカケに、笠原さんもいたからだよ。
久しぶりに見たら雰囲気が少し変わったよね。
憧れのあの女の子に少し雰囲気が近付いてきたんじゃない?」
「本当ですか・・・!?」
店長がそんな嬉しいことを言ってくれ、私は嬉しくて自然と笑顔になる。
“たまには店に来てね”
店長が最後にそう言ってくれてから別れ、また剛士君とあと少しの道を歩く。
「憧れの女の人に近付いてきたって言ってもらっちゃった!」
「あの人、何も処女っぽくないだろ。」
剛士君は私の憧れの女の人に1度だけ会ったことがある。
「瞳、“憧れの女”何人いるんだよ?」
「2人だけだよ?」
「・・・その2人は似てた?」
「似てたのかな・・・。
顔とかではなくて、美しく立つ姿が。
2人とも立つ姿が凄い美しくて。」
「俺はあの人が立った所は見なかったからな。」
「強い女性には憧れる。
私は・・・強くないから。」
「瞳は強いだろ。
週末にあの写真屋で1人過ごせるくらいに、強いだろ。」
剛士君が真剣な顔で私を見詰めた・・・。
「それに、いつも1番幸せな顔でいられる写真を選べる強さもある。
そのために長年バイトでい続けるくらい、瞳は強い。」
「そうですか・・・?」
「だからこそ、勉強不足ではあったな。
勉強はどこでも出来る。
どんな場所でも環境でも、金があろうとなかろうと。
勉強をやめない限りはずっと勉強が出来る。
勉強しろ、瞳。」
「はい・・・。」
私が頷くと剛士君が優しい顔で笑った。
「瞳は極上に良い女になれるくらい、それくらい良い女だよ。」
「極上に良い女・・・」
「愛して愛して仕方ない奴がいて、権力も兼ね備えた“極上に良い女”。」
剛士君がそう言い終えた時、藤岡ホールディングスのビルに着いた。
汗が吹き出てきて私は汗をハンカチで拭く。
「こんなに巨大な体を持つ生き物と関われたからな。
愛して愛して仕方ない女が折角見付けてくれたから、あとは俺も権力も兼ね備えてみるか。」
「じゃあ、私も・・・。
愛して愛して仕方ない“人”に見付けてもらえたので、少し権力のことも意識してみます・・・。」
「俺が輸血した“度胸”どうしたんだよ!
“少し”じゃなくてもっと意識しろよ!!」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
【完】秋の夜長に見る恋の夢
Bu-cha
恋愛
製薬会社の社長の一人娘、小町には婚約者がいる。11月8日の立冬の日に入籍をする。
好きではない人と結婚なんてしない。
秋は夜長というくらいだから、恋の夢を見よう・・・。
花が戦場で戦う。この時代の会社という戦場、そして婚約者との恋の戦場を。利き手でもない左手1本になっても。
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高17位
他サイトにて溺愛彼氏特集で掲載
関連物語
『この夏、人生で初めて海にいく』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高32位
『女神達が愛した弟』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高66位
『女社長紅葉(32)の雷は稲妻を光らせる』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 44位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 12位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『拳に愛を込めて』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高29位
『死神にウェディングドレスを』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『お兄ちゃんは私を甘く戴く』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高40位
最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた―――
ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。
それは同棲の話が出ていた矢先だった。
凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。
ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。
実は彼、厄介な事に大の女嫌いで――
元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――
糖度高めな秘密の密会はいかが?
桜井 響華
恋愛
彩羽(いろは)コーポレーションで
雑貨デザイナー兼その他のデザインを
担当している、秋葉 紫です。
毎日のように
鬼畜な企画部長からガミガミ言われて、
日々、癒しを求めています。
ストレス解消法の一つは、
同じ系列のカフェに行く事。
そこには、
癒しの王子様が居るから───・・・・・
カフェのアルバイト店員?
でも、本当は御曹司!?
年下王子様系か...Sな俺様上司か…
入社5年目、私にも恋のチャンスが
巡って来たけれど…
早くも波乱の予感───
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
景華
恋愛
顔いっぱいの眼鏡をかけ、地味で自身のない水無瀬海月(みなせみつき)は、部署内でも浮いた存在だった。
そんな中初めてできた彼氏──村上優悟(むらかみゆうご)に、海月は束の間の幸せを感じるも、それは罰ゲームで告白したという残酷なもの。
真実を知り絶望する海月を叱咤激励し支えたのは、部署の鬼主任、和泉雪兎(いずみゆきと)だった。
彼に支えられながら、海月は自分の人生を大切に、自分を変えていこうと決意する。
自己肯定感が低いけれど芯の強い海月と、わかりづらい溺愛で彼女をずっと支えてきた雪兎。
じれながらも二人の恋が動き出す──。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる