【完】初めてのベッドの上で珈琲を(カットページ掲載済2023.5.13)

Bu-cha

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それから、他の部署にもデリバリーとしてアイスコーヒーを届けに行く。
その途中で・・・



「笠原さん、持つよ!!」



紙袋を持ってくれた人を見ると、高柳さん。
高柳さんは優しい笑顔ではあるけれど、申し訳なさそうな顔もしている。
瞬きをしながら高柳さんを見ると、高柳さんは少し苦しそうな顔になった。




「金曜日、天野に送ってもらった?」



「はい。」



「天野はやっぱり凄いな・・・。
笠原さんの初体験の相手が女の子だって分かってても笠原さんのことがあんなに好きで。」



「それは・・・なんといいますか・・・。」



「俺なんて凄い動揺したし・・・。
大人になったから大丈夫とか思ってたけど、相変わらず小さい男だったよ。」



高柳さんが申し訳なさそうな顔で私を見た。



「俺さ・・・本当に小さな男で。
やっと現れた良いなと思ってた子の初体験の相手が女の子だって分かったら・・・なんというか、その・・・受け止めきれなくて。」



「でも、それを伝えてくれたんですね。」



「うん・・・。
前の彼女にはさ、別れたいと思った本当の理由も言えないくらい小さい男だったから。
それをずっと後悔してるから、今回はと思って。」



「ありがとうございます。」



「俺こそ・・・。
天野と笠原さんの感じを見てたら、俺って彼女とちゃんと向き合えてなかったなと大反省した。
今頃反省しても遅いんだけどね。」



高柳さんが悲しそうに笑って、人事部の部屋の前でアイスコーヒーが入った紙袋を渡してくれた。




「天野って、なんか難しそうな奴だけど頑張って。」



「そうなんです、凄く難しくて・・・。」




紙袋を受け取りながら高柳さんに笑い掛け、瞬きをした・・・。




人事部の部屋に挨拶をしてから入る。



「アイスコーヒーのデリバリーに来ました!」



同じ部署の皆さんなので緊張することはなく声を出せた。
みんながお礼を言いながらアイスコーヒーを取りにきてくれる中、カフェインが嫌いな天野さんだけはデスクに座ったまま。



天野さん用の牛乳が入ったカップを持ち、天野さんのデスクまで歩く。



「“剛士”君。」



“剛士”君と呼んだ。
天野さんのことを“剛士”君と・・・。
初めて呼んだ・・・。
そう呼んで欲しいと言われていたから。



剛士君は驚いた顔で私を見た。
それに瞬きをしながら笑い掛け、牛乳のカップを渡す。



「剛士君には牛乳です。」



驚いた顔のまま剛士君がゆっくりと牛乳のカップを受け取る。



そんな剛士君にもう一言だけ言う。



「キーボードを頑張って早く打つので、一緒に帰りませんか?」



人事部の人達の視線を感じてドキドキはしたけれど、やっぱり私には少しの度胸が輸血されたようだった。
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