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ラストのお客様が珈琲店を出てから、珈琲店にクローズの看板を出した。
そして、他の部屋の扉よりしっかりした扉を閉め店内の後片付けや掃除を始める。



二日酔いは随分と治ってきていたけれど、こんなに辛いならお酒は沢山呑みたくないなと思った。



でも、昨日の男性社員2人とのお酒の席で、初めてあんなに男性が酔っている姿を見て勉強になった。



私は30歳になったけれど知らないことばかりで・・・。
お父さんのお店の店番とカフェでのバイトしかしたことがなくて。
男の人との接し方もよく分からなくて避けてきたから、遅くなったけれど色々と勉強をしたいと改めて思った。



初めて・・・“勉強したい”、そう強く思った。



掃除を終えてから人事部の部屋に戻ると数人が残業をしていた。
私もそこに加わり、またパソコンと向き合う。
両手を広げ必死にキーボードを打つけれど、勿論全然進まない。



それでも時間を掛けて入力をし・・・全部、打ち終わった。



それが嬉しくて自然と笑顔になった時、シャッターの音が聞こえた。



音の方を見てみると・・・



「天野さん・・・」



天野さんがスマホを私の方に向け、たぶん撮ったであろう写真を確認しながら面白そうな顔で笑っている。



「接客中以外でも笑えるなら笑えよ!!」



そんなことを言われてしまい、小さく頷く。



「・・・なんか言えよ!!」



天野さんがそう言ってから自分の鞄を持って立ち上がる。
それを何となく見ていると・・・



「勉強しに行くぞ!!」



私に笑いかけながらそう言った・・・。



天野さんに黙って着いていくと・・・



「ここって・・・?」



「クラブ。」



「私踊ったり出来ないんですけど・・・。」



「そっちじゃなくて、綺麗なねーちゃんがいる方な。」



そう言われ天野さんを見上げると・・・
天野さんは私の背中に優しく手を添えてクラブというお店の中に入るよう促した。



初めて入ったクラブのお店の中。
綺麗な店内で綺麗なお姉さんが本当に沢山いて、私は何度も瞬きをする。



天野さんは面白そうな笑い声で笑い続け・・・
テーブルの方ではなくて、裏の方に私を連れていく。



「あれ、アンタどうしたの?」



その途中で綺麗な着物を着た女性が天野さんに声を掛けてきた。



「裏いい?こいつに勉強させる。」



「裏で?・・・良い女だね。
表で勉強させてあげるよ。」



「表は必要ない。」



「表の方が勉強出来るけどね。」



そんなやり取りを天野さんが着物の女性としていて、私はその着物の女性を見ながら瞬きをする。



「・・・天野さんのお母さんなんですか?」



私が聞くと天野さんが大笑いをして頷き、着物の女性・・・天野さんのお母さんは驚いた顔で私を見ている。
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