【完】夏の夜に、またね。(カットページ掲載済2023.5.14)

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そう聞かれ、俺はステンドグラスの世界の中に並ぶカヤを見渡す。
キャンバスの中にいる沢山のカヤの姿を・・・。



「いや、でも・・・俺の絵なんて売れますかね？」



「売れる。
この絵は“普通”ではない。
ここまで魂が震えた絵を見たのは人生で初めてだった。」



武田先生が即答し、シワが刻まれている力強い目で俺を見詰めてきた。



「売る気があるなら俺のツテで画廊に話をつけてやるが、どうする？」



そんな驚くことを言われ、キャンバスの中にいるカヤをまた見る。



“普通”の絵しか描けないはずの俺が描いた、“普通”ではない女の子のカヤの姿を。



「でも・・・この女の子、モデルになっている女の子がいて・・・。
勝手にそういう場で売っていいのか・・・。」



小さく小さく呟きながら、床に転がっていたスマホを手に取る。
そして電話を掛けた・・・。



カヤに電話を掛けた・・・。



忘れることは出来ないカヤの電話番号を入力して、電話を掛けた・・・。



夏の夜に再会出来て、セックスまでして、そしてまた俺の前からいなくなってしまったカヤに・・・。



無機質な音だけが俺の耳に入ってきて、その音を聞きながら壁にいるカヤのことを見詰める。



ステンドグラスグラスの世界の中で俺のタイプど真ん中のカヤが今日も俺を見詰めてくる。




そして・・・




“上手くいくよ、大丈夫。”




今日もそう言ってくれ、俺はゆっくりとスマホを耳から離した。




武田先生を真っ直ぐと見詰め返しながら口を開く。




「売ります。」




自然と力強い声が出て来た俺に武田先生が大きく頷いた。




「大学は一応卒業しておけよ？
そういうのを気にする奴もいるからな。」





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