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──────────────・・・・



何度も何度も鳴るインターフォンの音が聞こえる。
それをまた無視し、冷たくて固い床を背中に感じながらまた目を閉じる。



そしたら・・・



「ニャア───...」



と、ネコの声が聞こえてきて慌てて飛び上がった。
見てみるとあの不細工なネコがまた俺にガンを飛ばしている。



それからチラッと玄関の方に視線を移していて・・・



「カヤ・・・?」



フラフラとしながらも玄関へと歩き、扉を急いで開いた。



てっきりカヤがいるのかと思っていたので、扉の向こう側にいる人を見てその場にしゃがみ込んだ。



手にも足にも力が入らなかったから。



「須崎君、大丈夫!?」



扉の向こう側にいた武田先生が慌てた声を出し、俺の身体を支えて家の中へと歩いてくれる。



「父さんから連絡があって、様子を見に来たんだ。
夏休みが明けてから須崎君が1度も大学に来ていないって。」



「夏休み、もう終わったんっすか・・・?」



「そうだね、終わったね。」



武田先生が少しだけ笑いながらリビングの扉を開いた。
そして俺を支えたまま数歩だけ歩いた時・・・



武田先生が息を飲んだのを感じた。



しばらくの間武田先生は動かなくなり、俺は武田先生に支えられたまま立っていたけれど、身体がしんどくなってきて口を開いた。



「座っていいっすか?」



聞いても答えない武田先生から身体を離し、俺はリビングの床にあぐらをかいた。



そして無言のままの武田先生と一緒に眺める。



俺がリビングの壁に描いた“カヤ”を眺める。



リビングの1番大きな壁には“カヤ”がいる。



“上手くいくよ、大丈夫。”



俺にそう言ってくれた時のカヤの顔、俺のタイプど真ん中のカヤが大きく大きくいる。



そして、カヤの周りには広がっていた。



俺がデザインをしたステンドグラスが広がっていた。



そのステンドグラスからは光りが入り、カヤの顔を色とりどりの色で輝かせている。



「凄いね、ステンドグラスの中にいるみたい・・・。」



武田先生がやっと声を出し周りを見渡した。



夜が終わり朝陽が射し込んでいるリビングの中、リビングの壁という壁、天井の壁紙までもステンドグラスのデザインで埋め尽くされている壁を。



朝陽でステンドグラスが色とりどりに光る中、カヤが今日も言ってくれる。



“上手くいくよ、大丈夫。”



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