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「大学、大変?」



「そうっすね・・・。」



「分かるよ、俺もそうだったから。
上手くいっていない時って昔のことをよく思い出すんだよね。
楽しくて幸せだった昔のことを。」



「だからなんですかね・・・。」



だからこんなにカヤのことを思い出してばかりいるのかもしれない。
カヤのことばかり浮かんでくるのかもしれない。



でも・・・



「そういう感じとも何か違うけどな・・・。」



武田先生が“特別に”と言って警備員に話をして俺を学校に入れてくれ、外よりももっと暗闇の校舎の中を歩きながら呟いた。



在学中はこんなに暗闇の校舎を歩いたことはないけれど、暗闇の校舎の中で浮かび上がってくる。



高校時代の日常が浮かび上がってくる。



色濃く浮かび上がってくるから、この真っ黒みたいな色の上を更に上書きしていく。



俺の高校生活の日常は“カヤ”だった・・・。



この学校の中での日常は“カヤ”しかないくらい、それくらいに“カヤ”としか一緒にいなかった。



カヤと過ごした日常が色濃く浮かび上がっていく中、“あの頃”のカヤと一緒に校舎の中を歩いていく。



制服姿のカヤを見ながら俺も自然と笑う。
こんなに口角を上げたのはいつぶりだろう、頬が少し痛くなった。



痛い頬をそのままに俺は暗闇の中の校舎を進んでいく。



夏休み、2人で帰る時はいつもアイテープをしていなかったカヤの姿と一緒に。



そのカヤが俺の方から視線を移し、嬉しそうな顔で上を見上げた。
カヤはここを通る時にいつも嬉しそうな顔でそこを見上げる。



俺がカヤから無理矢理のようにデザインさせられたステンドグラス。
そのステンドグラスをいつも嬉しそうに見上げていた。



“素晴らしい作品だからこのままにするようにお願いした!!”



嬉しそうに報告をしてきたカヤのことを思い出しながら久しぶりにこのステンドグラスを見上げた。



あの頃はマジマジと見たことはなかったから、今日初めてこんなにちゃんと見た。



そしたら・・・



何の光りかは分からないけれど、校舎の中に少しだけ光りが入ってきた。



暗闇だったはずの校舎がその光りで少しだけ明るくなる。



俺がデザインをしたステンドグラスの色とりどりの色で、暗闇の校舎の中が満たされていく。



その幻想的な光景を見渡していた時、気付いた・・・。



カヤがいた・・・。



ステンドグラスのど真ん中の下に、カヤが立っていた。



ステンドグラスを見上げるでもなく真っ直ぐと俺のことを見ていた・・・。



制服ではなくワンピースを着たカヤが、暗闇の中で色とりどりの光りに輝いて立っていた・・・。
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