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結婚をしてから“ゆきのうえ商店街”をすぐに離れ、父さんと母さんはマツイ化粧品に通いやすいマンションへと引っ越した。
だから兄貴の名前も俺の名前も父さんが付けてくれていた名前だった。
俺と同じ“カヤ”という名前の女の子。
それもカタカナで“カヤ”という名前の国光さんに聞いた。
国光さんは照れたように、でも嬉しそうな顔で笑って頷いた。
夏休み前まではアイテープをつけていた目に今日はアイテープがついていない。
「ニャンと出会った時、“この人だ!”って分かるようにお父さんが同じ名前を付けてくれたのかな?」
そんなことを言われて・・・。
急に、そんなことを言われて・・・。
母さんに雰囲気のよく似た、綺麗な奥二重の目を三日月にして笑いながら言われて・・・。
俺の横に立ってキャンバスを見下ろしていた国光さんが、フッと動き・・・
俺が描いていたキャンバスの中にヒョコッと顔を入れ、その目が宝石のようにキラリと輝いた。
そんな目で俺のことを見てきて・・・
「ニャンのお母さんの夢をニャンが叶えることになるみたい。
ニャンのお母さん、夢があったの?」
そんな“普通”ではないことを、俺が描いていた“普通”の絵の上から言われた。
アイテープがついている時の“普通”の顔でもなく、俺のめちゃくちゃタイプな顔になっている“普通”ではない顔で。
俺の“普通”の絵を上書きしてしまったキャンバスの中に現れた国光さんに伝える。
「俺の母さんは画家になるのが夢だったんだよ。」
「画家か・・・。」
国光さんが小さな声で呟き、また目を宝石のようにキラリと光らせた。
「いつか私をモデルに描いてよ、ニャン。」
.
だから兄貴の名前も俺の名前も父さんが付けてくれていた名前だった。
俺と同じ“カヤ”という名前の女の子。
それもカタカナで“カヤ”という名前の国光さんに聞いた。
国光さんは照れたように、でも嬉しそうな顔で笑って頷いた。
夏休み前まではアイテープをつけていた目に今日はアイテープがついていない。
「ニャンと出会った時、“この人だ!”って分かるようにお父さんが同じ名前を付けてくれたのかな?」
そんなことを言われて・・・。
急に、そんなことを言われて・・・。
母さんに雰囲気のよく似た、綺麗な奥二重の目を三日月にして笑いながら言われて・・・。
俺の横に立ってキャンバスを見下ろしていた国光さんが、フッと動き・・・
俺が描いていたキャンバスの中にヒョコッと顔を入れ、その目が宝石のようにキラリと輝いた。
そんな目で俺のことを見てきて・・・
「ニャンのお母さんの夢をニャンが叶えることになるみたい。
ニャンのお母さん、夢があったの?」
そんな“普通”ではないことを、俺が描いていた“普通”の絵の上から言われた。
アイテープがついている時の“普通”の顔でもなく、俺のめちゃくちゃタイプな顔になっている“普通”ではない顔で。
俺の“普通”の絵を上書きしてしまったキャンバスの中に現れた国光さんに伝える。
「俺の母さんは画家になるのが夢だったんだよ。」
「画家か・・・。」
国光さんが小さな声で呟き、また目を宝石のようにキラリと光らせた。
「いつか私をモデルに描いてよ、ニャン。」
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