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赤いキャミソールワンピースと赤いサンダルで夏の夜の下を歩いていく。
家の最寄り駅を出た時には、強い風はムワッと熱のこもった風ではなくいくらか軽い風になっていた。



8月も下旬に入った。



「そろそろ夏も終わる・・・。」



23歳の夏の夜、ニャンと再会出来ると分かっていた。
そして付き合うということも分かっていた。



こんな再会でこんな付き合うという流れだったらしい。



「付き合った・・・よね?」



ニャンは私をそういう“好き”ではないけれど。
化粧をした私の顔が凄くタイプなだけだけど。
“付き合おう”とも言われていないけれど。



“いなくならないで”と。
“一緒にいよう”と。
そう言ってはくれた・・・。



真っ白な顔にクマが出来て苦しそうに俯いていたニャンの顔を思い出す。



「ニャンがまた絵を描けるようになる為にか・・・。」



好きな女の子がいなくなってしまったこのタイミングで私が現れた。
ニャンが絵を描き続けることが出来るように。



それはそれで良いのかもしれない・・・。



自分に言い聞かせながら、“ゆきのうえ商店街”のアーチをくぐった。



そしたら、ジャラジャラとした聞き覚えのある音が鳴り響いていて、それが近付いてくるかと思っていたら・・・。



いた・・・。



ニャンのお父さんがいた・・・。



甚平姿で、ニャンのお父さんと言われても信じられないようなオジサン・・・。



身長は私くらい、手足は短くお腹も出ている。
お顔も・・・な顔をしていて、ニャンはお母さんに似ているんだろうなとこの夫婦を商店街で見掛けるようになってから思っていた。



このオジサンがお姉ちゃんと話しているのは知っているけれど、私とは話したことはない。
ニャンのお母さんはすれ違えば挨拶をしてくれることはあったけど、このオジサンはそれもない。



深刻そうな顔をして甚平のポケットに両手を入れ、不良のような歩き方で下を向きながら歩いてくる。



それをあまりジロジロ見ないように視線を逸らし、それでも前を向いて歩いていた。



そしたら・・・



少し離れた所でニャンのお父さんが立ち止まったのが分かった。
それは視界に入ったけれど歩き続け・・・



通り過ぎてしばらくした時・・・



ガシッッッと、私の腕を力強く掴まれた。



その熱があまりにも熱く二の腕が焼けてしまったような感覚に陥り、慌てて振り返った。



そしたらニャンのお父さんが・・・



目も口も大きく大きく開けて私の顔を見ていて・・・



「え────────!!!!?」



と、静かな商店街中に響く声で叫びだした。
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