“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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その日の定時後



増田ホールディングスのビルから結構近い所にある美容院。
初めて入った美容院の中には客が私1人だけしかいない。



美容院自体の扉もクローズにしてくれ、ブラインドも完全に閉められている。
ここまで特別扱いをしてくれた美容院は初めてなので驚き、椅子に座る私の後ろに立ったマナリーを鏡越しに見る。



「なんか、ごめんね?
店長さん大丈夫なのかな?」



「うん、ちゃんと説明してあるから大丈夫。
だから他の女性スタッフは全員帰らせてくれて、他のお客さんも入れないようにしてあるからソっちゃんは何も心配しなくて大丈夫だからね?」



「いや、そっちの“大丈夫?”じゃなくて、こんなに特別扱いをしてくれちゃって、マナリーはここで働き始めたばっかりなのに大丈夫なのかなって。」



「うん、それが全然大丈夫。
なんといっても望が紹介をしてくれた店長・・・というか、オーナーのお店だし。」



「店長さん良い人なんだ、良かった。」



いつからか、マナリーが田代の部屋で私や望のカットをすることを田代から拒絶され、私も望もマナリーが働く美容院でカットをお願いするようになっていた。



そこで起きた新たな問題が、私のことを巡って繰り広げられる女同士のいざこざ。



学生時代は田代や望もいたこともあり、更には私自身が学校内の女の子達から手の届かない存在として認識されていたこともあり、マナリーは嫉妬を受けて大変なこともあっただろうけどそこまでの大きな問題にはならなかった。



でも、こういう場では違ってしまって。



私のせいでマナリーは、職場内の女の子達やたまたま私と同じ時間に居合わせた女の子と度々トラブルになってしまっていた。



それが原因でマナリーが店を辞めなければいけない事態にも発展し、そんなことが数回続いてしまっていた。



私がマナリーの店に来るのを止めようとマナリーに提案したのは結構前のこと。
マナリーはそれに号泣し、“お店以外ではもうソっちゃんには会わない!だからソっちゃんのカットだけは私にやらせて!!”と懇願されてしまった。



前回の店でもトラブルになりマナリーが店を辞めることになって約3ヶ月。
なかなか次の店が決まらなかったこともあり私も髪の毛を切るのが約3ヶ月ぶりになってしまった。



メッセージや電話ではたまに連絡を取りあっていたので、なかなか次の店が決まらないマナリーに望がこの店の店長を紹介してくれて採用されたと喜んでいたのは知っている。



いつものように・・・いや、いつも以上に嬉しそうなマナリーの顔を見て私も自然と笑顔になる。



「結構伸びちゃったね~!!」



“愛”のある目で私の髪を見下ろし、私の髪の毛を優しく触れながら確認していくマナリー。



マナリーの言葉に私も返事をしようとした時・・・



鏡の中の向こう側に見える扉が開いた。



その扉からは“男”とは分かるけれどめちゃくちゃ綺麗で格好良い人が現れて・・・



鏡越しで私と目が合い、少しだけ目を見開いた。



でも次の瞬間には物凄くジッと見詰められ・・・



「まだまだ眠ってるな。
起こしたらとんでもない“女”が目覚めるのに、間中、お前何を手ぇ抜いてるんだよ?」



静かだけど棘を感じる声で、マナリーにそう口にした。
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